2023大学入試の動向
駿台・石原賢一氏「難関大の志望者が増加。外国語、国際の人気は戻らず」
2022.09.02

2023年度大学入試は、9月1日から総合型選抜(旧AO入試)の出願が始まり、スタートします。2回目となった今年1月の大学入学共通テストは、数学などの平均点が大幅に下がり、受験生らに動揺が走りました。共通テストや学部系統別、個別大学の動きは変わるのでしょうか。模試データを基に、現段階での見通しを駿台予備学校の石原賢一・進学情報事業部長に聞きました。(写真は、共通テストに臨む受験生=1月15日、九州大で)
(いしはら・けんいち)駿台予備学校に入職し、学生指導、高校営業、カリキュラム編成を担当後、神戸校校舎長を経て2017年から駿台教育研究所進学情報事業部長。2022年6月から組織変更に伴い、駿台予備学校進学情報事業部長。
共通テストのあり方を見直す時期に
どこの模試もそうだと思いますが、夏までの模試の受験状況を見ると、共通テスト模試を受けない傾向が見られます。特に私立文系の志望者に顕著です。国立大志望の上位層は受けているので、受験生が二極分化している傾向が読み取れます。
今年の共通テストでは、数学Ⅰ・Aや数学Ⅱ・Bの平均点が昨年より20点近く下がり、数学Ⅰ・Aや生物や化学などの平均点が過去最低になるなど、難しかったことが話題になりました。しかし、東大や東京工業大、京都大、大阪大など難関国立大の志願者数は最終的に増えました。私立大でも、早稲田大と慶應義塾大の両方の志願者数が増えました。これは久しぶりのことです。
今年の共通テストに対しては、平均点が昨年より大幅に下がったことで、数学を中心に問題自体への批判も出ました。しかし、駿台が東大受験者の数学の結果を分析したところ、共通テストと東大の二次試験の結果との相関関係は高く、合格者と不合格者の得点差が大きくなっていました。問題内容に比べて試験時間が十分だったのか、中間層が得点できなかったために中間層の選抜ができなかったという問題点はあります。ただ、英語はリスニングを含めてセンター試験の問題より難しくなっているのに、平均点は上がっています。共通テスト導入にあたって5年前の試行調査の時から、こういう問題になることが示されていたのに、数学は高校側が対応できていません。
受験生の二極分化の現状を見ると、共通テストを含めた大学入試のあり方を見直す時期に来ていると思います。共通テストの志願者約50万人のうち、試験結果を大学入試センターに請求しない、つまり共通テストを大学入試に使わない受験生が約10万人います。共通テストは受けるが、国公立大や私立大の共通テスト利用入試に出願しない生徒たちです。地方の高校では、進路に関係なく、共通テストを受けるよう指導しているところがあります。
そもそも共通テストですべての入試を測ろうとする、共通テストが大学入試の中心にあるという考え方が間違っています。1979年にセンター試験の前身である共通一次試験を導入した目的は、国公立大の個別試験に先立ち、基礎的な問題で一次選考に使うためでした。そのために東大が行っていた一次試験の合格者に対して二次試験を行う仕組みを参考にしたのです。その後、私立大も参加するセンター試験に移行し、私立大の大半が参加するようになりました。しかし、私立大に共通テスト利用入試で入学しているのは、約5%にすぎません。