都立高入試スピーキングの不可解

スピーキングテストに保護者の怒り(中)「1教科分の配点」「入試間際の成績送付」は理不尽すぎる

2022.09.02

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石田 かおる
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今年11月27日、都立高入試で初めてとなる、英語スピーキングテスト「ESAT-J」が実施される予定です。7月7日から申し込みが開始されましたが、実施3カ月を前に、中学生の子を持つ保護者らが中止を求める抗議行動に踏み出しました。かねてさまざまな問題が指摘されてきましたが、保護者らは何を問題視しているのでしょうか。取材しました。(写真は、市民集会後に都庁前でスタンディングし、ESAT-Jの中止を求める保護者ら=2022年8月18日、東京都庁前)

なぜ1教科分の配点? 中学生は怒っている

8月18日、都議会議事堂内では「都立高校入試への英語スピーキングテスト導入の見直しを求める市民大集会」が開かれた。オンラインも含めて、教員、保護者、都議ら約200人が参加した。

ESAT-Jは東京都が事業主体、民間事業者ベネッセコーポレーションが運営主体となり共同実施する。テストはタブレット端末を使い、音声を吹き込んで解答。今年11月27日に実施予定で、都内の公立中学3年生全員が受験し、フィリピンで約8万人分を採点する。1月中旬に成績票が渡され、20点満点で調査書に記載し、都立高入試に加算される。

市民集会には、中学3年生と大学生の子を持つ保護者の岡田尚子さんが登壇。ESAT-Jについて「保護者と中学生が怒っているポイント」として、以下の5点を挙げた。

① 説明会がない。プリントとHPだけ……
② 個人情報の責任は?
③ 「20点問題」に子どもたちは怒っている!!
④ スピーキングって機械に話しかけること? GTECに似ている?
⑤ 「そもそも大学入試で却下されたのに!」問題

※①②については「スピーキングテストに保護者の怒り(上)」で詳しく紹介しました。こちらをご覧下さい。

③ 「20点問題」に子どもたちは怒っている!!

調査書の内申点では、英語や数学などの主要5教科の1教科あたりの満点は約23点。スピーキングの配点は20点で、ほぼ1教科分に匹敵する。

岡田さんは言う。

「いまの中学生はほんとうに大変です。中間、期末の試験のほかに、あらゆる教科で、ノート、プリント、リポート、自己評価を毎回提出させられ、さらにはタブレットで資料を作り、プレゼンをし、スピーチもしています。その努力を全部合わせて、主要5教科は23点ずつなのに、スピーキングテストのたった1回が20点。『納得いく説明がない』『理不尽だ』と、うちの子も含め子どもたちは怒っています」

内申点のプレッシャーと苦労について、市民集会後のスタンディングで訴えた保護者もいた。

「子どもたちは中学1年のときから、学校の部活を楽しむ暇もなく、やれ委員会だ、やれボランティアだ、『提出物1個出さなかったら5が取れないよ』と脅され、内申点を一つ上げるため3年間頑張ります。ものすごいプレッシャーです」

ところが、英語の1技能にすぎない、15分程度のスピーキングテストの点が、3年間の苦労の末に得る内申点の1教科分とほぼ同じ。取材した保護者たちが、「理不尽さ」の筆頭に挙げたのはこの配点のアンバランスさだった。

さらに、スコアの点数化の不明瞭さもESAT-Jの大きな問題だと、元中学校教員の吉岡潤子さんは集会で指摘した。ESAT-JのスコアはA~Fの6段階のグレードに分けられ、4点刻みの段階評価に置き換えられる。

ESAT-Jの点数化
ESAT-Jの点数化

吉岡さんは言う。

「79点と80点はスコアでは1点差なのに、調査書の点では4点差になります。そうかと思えば、1点から34点は33点も開きがあるのに調査書では同じ4点です。おかしくないですか?」

加えて、保護者や教員の怒りを買っているのが「成績を渡される時期」だ。都立高生の子どもを持つ保護者は言う。

「通常、12月上旬に学校で三者面談をして、志望校を決めます。そこから子どもは第一志望に向けて、集中して勉強します。ところが、1月中旬にスピーキングテストの成績が届いて、予想していたよりスコアが低かった場合、合否ラインギリギリの子は第一志望を変更してランクを下げないといけなくなるかもしれない。本番直前に、子どものメンタルを打ち砕く、そのようなことを平気でやろうとしていることに憤りを感じます」

今年3月まで教壇に立っていた元教員も、スタンディングでこう話した。

「なぜ英語の点だけ調査書で2倍?と思いました。入試の間際になってスピーキングテストの点数が来て、生徒が『なんで、この点数なの?』と不満を覚えたり、納得がいかなかったりした場合、メンタルが受験に影響してしまいます。採点の開示請求にも応じないということですから、入試が終わってからも引きずるかもしれません」

1月中旬の進路変更は、生徒や保護者、学校現場に大きな混乱をもたらす、との声も多数聞かれた。

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