2023大学入試の動向

河合塾・近藤治氏「難関大かつ資格志向が強い、社会科学系の人気復活」

2022.09.09

author
中村 正史
Main Image

2023年度大学入試は、9月1日から総合型選抜(旧AO入試)の出願が始まり、スタートしました。2回目となった今年1月の大学入学共通テストは、数学などの平均点が大幅に下がり、受験生らに動揺が走りました。共通テストや学部系統別、個別大学の動きは変わるのでしょうか。模試データを基に、現段階での見通しを河合塾教育研究開発本部の近藤治主席研究員に聞きました。(写真は、共通テストに臨む受験生=1月15日、北海道大で)

近藤治

話を聞いた人

近藤 治さん

河合塾教育研究開発本部主席研究員

(こんどう・おさむ)河合塾入塾後、教育情報部門で全統模試のデータをもとにした大学入試動向分析や進学情報誌の編集に携わる。教育情報部部長、中部本部長などを経て、2021年4月から現職。

理系は農、医、情報が人気

8月中旬に実施した共通テスト模試を見ると、理系の人気が高い「文低理高」は緩やかに続いています。ただ、昨年までほど強くはなく、文系の中でも法、経済などの社会科学系は好調で、コロナ前に志望者が戻っています。今春の入試では、法が人気でしたが、政治、経済・経営・商も人気が戻っています。

一方、文系の中で、人文系は私立大を中心に減っています。外国語や国際関係も減少が続いています。新型コロナウイルスに伴う渡航制限などで、この1、2年の対前年比2割減といったどん底からは脱していますが、志望者が回復するまでには至っていません。

理系は今春の入試と同じ傾向です。農や医のように「生命」をキーワードにした学部系統は、今春入試でも人気でしたが、さらに拍車がかかっています。農はそれまで不人気が続いていたことの反動もあります。工は全体としては微増ですが、情報が相変わらず人気です。工はかつては機械、電気・電子が王道でしたが、王道は通信・情報に移っています。今春入試の競争倍率も、通信・情報が電気・電子を抜いて最も高くなりました。理は手堅い人気を維持しています。

23年度入試の大きな特徴は、難関大かつ資格志向が強いことです。国公立大では、医の志望者が前年比(%)で118、農の中で最難関の獣医が119、薬114となっています。私立大でも医112、獣医は123と激増しています。

大学別に見ても、難関大志向が見られます。前期日程で東大は前年比118、京都大は111、北海道大110、九州大113です。このレベルで前年比1割以上増えるのは、あまりないことです。東大は理三が121と驚くような数字になっています。

私立大も、一般選抜で早稲田大119、慶應義塾大110です。学部別に見ると、早稲田大の政治経済113、法111、基幹理工111、慶應義塾大は医122、薬121、商118、法113です。早稲田大の政治経済学部は、21年度入試から共通テストの数学Ⅰ・Aを必須にして、日英両言語の長文を読解する独自問題を課し、2年連続で志願者が減りましたが、入試改革が定着し、来年は増えそうです。

東京理科大も103と好調で、先進工120、薬118です。

MARCHでは、明治大が政治経済、経営、商、法の社会科学系の学部が増えているほか、農も前年比129と激増しています。法政大も経済、経営、法、理系では生命科学、理工が大きく増えています。

関関同立も同じ傾向です。経済・経営・商、法はいずれの大学でも増えており、理系では同志社大の生命医科学、理工、立命館大の生命科学、情報理工、薬、関西大の化学生命工、関西学院大の生命環境が人気です。ここでも「生命」がキーワードになっています。

バックナンバー
新着記事
新着一覧
新着一覧

ページトップ