2023大学入試の動向

河合塾・近藤治氏「難関大かつ資格志向が強い、社会科学系の人気復活」

2022.09.09

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中村 正史
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私立専願者の共通テスト離れが起きている

私立大を難易度別に見ると、上位大学は増えていますが、偏差値54.9~50.0を下回るくらいから、志望者が減少しています。併願数が減っていることもあり、私立大は全体的に易しくなっています。

今お話ししているのは一般選抜を目指す受験生の動きですが、私立大は総合型選抜(AO)や学校推薦型選抜(推薦)で多く取っているので、難関大を除けば入りやすくなっています。

地方から首都圏など都市部の大学を目指す動きは、今春入試から回復傾向にありましたが、今回の模試で東京の私立大の志望者が増えているところを見ると、コロナ前に戻りつつあると言えます。今春入試では、北海道と東北を除いて、首都圏の大学への志願者が増えていました。

今年1月の共通テストは、数学Ⅰ・Aや数学Ⅱ・Bの平均点が昨年より20点近く下がり、数学Ⅰ・Aや生物、化学などの平均点が過去最低になりました。これまではセンター試験の点数が下がると、難関大の志願者は大きく減っていましたが、今年は初志貫徹した受験生が多く、難関大の志願者は最終的に増えました。難関大は二次試験の比重が大きく、共通テストの点数が多少低くてもそれほど影響しないことや、国公立大の倍率は数年単位で見れば下がっており、身近な先輩たちの合格状況を見ていて、肌感覚で「自分も合格できる」と冷静に判断したのではないかと思います。

来年の共通テストは易しくなるとは思わない方がいいです。文部科学省や大学入試センターは、共通テストを国公立大の選抜のために使おうとしていると思われ、今年くらいの問題が標準になると見ています。

1979年に始まった共通一次試験は1990年からセンター試験に替わり、多くの私立大が参加するようになりました。その結果、共通一次の元々の目的だった、国公立大の個別試験の前に行う一次選考という役割が機能しなくなりました。共通テストは、試験名を「共通」に戻したことに象徴されるように、共通一次のように、国公立大のための試験にしようとしていると捉えています。ある意味で今年の共通テストは思惑通りだったのではないかと思います。

センター試験はオーソドックスな問題だったので、センター試験対策の勉強をすれば私立大対策にもなっていましたが、共通テストは全く別物で、共通テストだけのために勉強しなければなりません。私立専願の受験生にとっては、余分に勉強しなければならず、うまみがありません。2回目になった今年1月の共通テストから私立専願者が受けなくなっている傾向が見られていましたが、今年の模試ではその傾向がさらに強くなっています。共通テストの問題の難易度を見ても、私立専願者の共通テスト離れに拍車がかかってもおかしくありません。

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