キャンパスリポート

学生団体を設立し、スタートアップ企業に就職した東大生「自分の成長を実感したかった」

2022.09.20

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中村 正史
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かつては4年でストレートに卒業して、官僚や大企業を目指していた東大生の意識が変わっています。休学して自分の関心事を見つめ直したり、起業したり、スタートアップに就職したりすることが、一つの選択肢になっています。学部生の休学者は年を追って増え、22年の休学者(5月1日現在)は09年に比べて85%も増えていることがわかりました。これまで連載してきた「休学する東大生」の取材の中で出会った、「変わる東大生」の潮流の中にある東大卒業生の1人を紹介します。(写真は、在学中に学生団体を立ち上げ、スタートアップに就職した鈴木大雅さん)

想像していた東大とは違っていた

これまで紹介した休学者7人の大半と繫がりがある東大卒業生がいる。今春、経済学部を卒業し、創業5年のスタートアップ企業「キャディ」に就職した鈴木大雅さん(25)である。2浪して東大に入り、「うち1年間は大学に通いながら勉強した、回り道みたいな時間だったので」と言う鈴木さん自身に休学経験はないが、自分の関心事を見つめ直し、活動を広げていった点で休学者たちと共通するものがある。

東京都立西高の出身。祖父が事業をしていたことにも影響され、経済学部に進む学生が多い文科二類を現役の時から受験した。現役の時は浪人を覚悟しており、1年間予備校に通って再度受験した時は、合格最低点に0.28点足りなかった。明治大学政治経済学部にセンター利用入試で合格し、授業料免除の特待生(特別給費奨学生)になったので、「1浪で東大に受かっていた場合の自分を超える体験をしよう」と、大学生活と受験勉強を両立する道を選んだ。授業の単位はすべて取得し、大学の短期留学制度を利用して米国に3週間留学し、インドで半月、ボランティア活動をした。予備校には通わず、自学で再チャレンジのために受験勉強した。

3度目の挑戦で文二に入学すると、川人博弁護士が講師を務める「法と社会と人権ゼミ」や、東大生と卒業生が交流するイベントを企画・運営する学生団体「東大ドリームネット」に参加した。

ただ、実際に入学してみると、東大に憧れ、期待が高かっただけに、「正直ちょっと残念でした」という。

「中高一貫校の出身者が多く、高校4年生というか、高校の延長の意識を持っている学生が多いと思いました。熱量が少なく、大学で4年間、楽に過ごして卒業できればいいと思っている人が多く、こいつは面白いという学生にあまり多く出会えませんでした。想像していた東大と違い、あれほど憧れていたのにと、嫌な気持ちでした」

2年になって、サークルやゼミ、学部学科などに関する生の情報を提供する仕組みをつくり、学生が最適のマッチングをできるようになるといいな、と考えるようになった。

「自分自身の経験から、サークルは入ってみないと実情がわからないと実感していました。東大では、入ってきた新入生に対して、語学クラスが同じ1学年上の先輩が合宿に連れて行くのですが、その場でサークルの裏情報を教えたら、彼らが入ったサークルでの定着率が非常に高く、この仕組みをつくる意義があると思いました」

こうして2年の終わり頃の2020年2月に構想したのが、サークルなどの詳しい情報をネット上で提供する学生団体「UT-BASE」の設立である。デザインやSNS運用に長けた同級生と6人で活動を始めた。

折しも新型コロナウイルスの感染が広がり始めた時期で、上記の合宿など対面で情報を伝える機会がなくなり、「UT-BASE」の情報サイトは急速に拡大した。サークルや学科の紹介、履修など諸手続きの情報を広く発信し、学生から寄せられる質問にも丁寧に答えた。

「僕の周りには手伝ってくれる人がいて、精度の高い情報がたくさん集まる環境にありました。『UT-BASE』のメンバーは徐々に増え、3年の夏休みに後輩に代表を譲る頃には約30人になっていました」

在学中は「UT-BASE」のTシャツを着て活動していた。中央下が鈴木さん(2021年11月=本人提供)
在学中は「UT-BASE」のTシャツを着て活動していた。中央下が鈴木さん(2021年11月=本人提供)
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