都立高入試スピーキングの不可解

都スピーキングテストは「アチーブメントテストとしても入試としてもダメ。5億円の無駄づかい」 英語教育専門家の保護者

2022.09.28

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石田 かおる
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山下 知子
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東京都教育委員会が、都立高校入試での実施を目指す英語スピーキングテスト「ESAT-J」。実施まで2カ月となりましたが、保護者や英語教員などから様々な問題点が指摘され、中止を求める声が高まっています。中学高校で英語を教え、ESAT-Jのプレテストを受けた子どもがいる保護者の1人でもある、久保野雅史・神奈川大教授(英語教育学)に話を聞きました。

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話を聞いた人

久保野雅史さん

神奈川大教授(英語教育学)

(くぼの・まさし) 横浜市出身。1983年に高校英語教員に。筑波大附属駒場中高などで教壇に立ち、2008年から神奈川大で英語教員養成を担当。現在、外国語学部教授。

今年11月27日に実施予定の、都のスピーキングテスト「ESAT-J」は東京都が事業主体、民間事業者ベネッセコーポレーションが運営主体となり共同実施する。テストはタブレット端末を使い、音声を吹き込んで解答。都内の公立中学3年全員と、都内在住あるいは都内の私立・国立中学3年の希望者が受験する。フィリピンで約8万人分を採点し、1月中旬に成績票が渡され、20点満点で調査書に記載。都立高入試に加算される。

このテストに都税5億円投入は妥当なのか?

――昨秋のプレテストを、当時中学3年だったお子さんが受けたことが、ESAT-Jの問題に気づくきっかけになったということですよね。今年1月中旬にスコアレポートが返ってきたときの、お子さんの反応はどうでしたか?

「ふーん」で、終わりです。ちゃんと見てもいないんじゃないかな。

そりゃそうです。それは終わったことで、間近に高校受験が控えているのですから。とにかくその時期は、2月の試験に向けて、追い込みをはかっている時期です。終わったことを振り返っている余裕なんてありません。

子どもの友人たちにも聞きましたが、似たり寄ったりです。後述しますが、トータルのスコアしか出ないので、自分が何を間違えたのか、詳細な情報がありません。

――都教委は、ESAT-Jの目的について、①「話すこと」の能力の達成度を測る「アチーブメントテスト」として学習の参考や英語指導の改善に活用、②学習成果をみるため、都立高校入試において結果を活用――の2点を挙げています。プレテストを受けたお子さんのスコア表を見て、保護者として、また、かつて中高生に英語を教えていた教員として、どう感じましたか?

行政としては、東京全体の傾向は分かるでしょう。また、学校にとっては、後輩のための授業改善にはなりえます。でも受けた個人にとっては何の意味もないものです。スコアが書かれた紙1枚に、どうやったら改善がはかれるのか、具体的なアドバイスがほとんど書かれていないからです。

文中写真① スコアレポート

具体的にみていきましょう。上の写真ではスコアは78点で、グレードはB。実際の受験では16点加点されます。あと2点あればグレードAになり、受験では20点加点の扱いになります。

ESAT-Jのスコアとグレード、換算点
ESAT-Jのスコアとグレード、換算点
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