復活!体験学習のチカラ
運動会、学園祭、修学旅行が今年は復活! 児童・生徒が工夫して感染防止と両立
2022.10.17

コロナ禍で人との接触が制限される中でも、多くの学校は工夫を凝らして行事を実施し、再開しています。各校に現状を聞きました。(写真は、川崎市のアリーナで開かれた横浜女学院中学・高校の体育祭=同校提供)
運動会は広い会場で
文部科学省の全国学力・学習状況調査によると、2021年度の「運動会(体育祭)・競技会・球技会」は小学校の97.7%、中学校の95.2%が内容や方法を変更して実施。「集団宿泊活動(修学旅行も含む)」は小学校の83.7%、中学校の61.8%が内容や方法を変更して実施したが、小学校の7.9%、中学校の21.0%は実施を取りやめた。
巣鴨中学・高校(東京都豊島区)の体育祭は9月、新宿区の国立競技場で開かれた。例年は学校敷地内のグラウンドで実施し、保護者や受験生に公開してきた。しかし2020年、21年はやむなく中止。今年もグラウンドで体育祭を実施できるかどうか、実施の場合にはどうすべきかを検討するよう、学校長から体育科の先生たちに投げかけられていたという。
教員の一人が5月中旬、国立競技場で開催されたイベントを紹介するテレビ番組を見て、「体育祭を国立競技場で実施できるかも」とひらめいた。問い合わせてみると、あっさり「貸し出せる」との回答を得て、とんとん拍子で話は進んだ。余裕があるので生徒席は十分な距離を確保することができる。
とはいえ、「電光掲示板の使用、トラックのコース設定など、この大きな競技場を使いこなして学校の体育祭を運営できるのは、巣鴨学園の教員のノウハウと人脈があればこそ」と大山聡入試・広報部長は胸をはる。東京オリンピックの陸上競技でスターターを務めた人を含む9人の公認審判員を呼ぶこともできたという。

横浜女学院中学高校(横浜市)も6月、3年ぶりの中高合同体育祭を、川崎市の「とどろきアリーナ」で実施した。20年は中止、21年は中高で別の日に、応援合戦はビデオ撮影したものをモニターで流しての開催だった。6学年合同は、体育祭で中心となる中3にとっては初めて、高2にとっては中2以来で、これまでの経験の積み重ねがない状態。しかし、佐々木準教頭は「厳しい条件下で工夫することを体験してきた2年間が、今年どう開催するかという体育祭実行委員会の話し合いに生きた」と話す。
種目数の見直し、ボール運びなどの身体接触が少ない競技にする、拍手での応援、色別の軍手をして競技に臨む――など、感染対策の工夫を生徒自身が考えた。「当日の熱気に生徒も教師も感激した」と佐々木教頭。接触の多い騎馬戦や棒倒しは今年も実施を見送ったので、3年のブランクにより経験者がいなくなってしまった。次年度に実施できるかどうかは分からないという。
吉祥女子中学・高校(東京都武蔵野市)の運動会は例年9~10月ごろ、全校生徒が八王子のグラウンドに勢ぞろいして開催されていた。学年を縦割りにして4色に分かれて競い合い、大いに盛り上がる行事だ。20年春にいったんは中止する方向性が学校から生徒に示されたが、生徒会の高2体育委員会の生徒から「開催したい」という提案が出てきたという。
生徒の提案は、昼休みに選手だけが校内のグラウンド等で競技、数日後に動画で全校放送するというサイクルを10月半ばから毎日繰り返し、点数も蓄積して、11月末に色別の勝敗を決する「リモート体育祭」というもの。「その頃は今以上に社会の空気が重かった。例年とは形式は違っても毎日運動会があったことは救いになったようで、生徒も明るくなった」と杉野荘介広報部長は振り返る。今年は学校生活もほぼ従来通りに戻ってきており、運動会は10月に中学と高校で分散開催する。