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教育未来創造会議の「理系5割」提言 京都橘大・日比野英子学長「気をつけて説明しないと誤解される」

2022.10.18

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中村 正史
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「教育再生実行会議」の後継として岸田内閣が設置した「教育未来創造会議」が5月に出した提言を受け、各省庁がその具体化に向けて動き出しています。提言はデジタル人材の育成から奨学金制度、リカレント教育まで多岐にわたりますが、注目されているのが、理系の学生を5割程度に増やすという目標です。同会議の有識者メンバーで、2021年に工学部を開設した京都橘大学の学長を務める日比野英子さんに聞きました。(写真は、工学部情報工学科の授業を受ける学生たち=京都橘大学提供)

日比野英子

話を聞いた人

日比野英子さん

京都橘大学学長

(ひびの・えいこ)同志社大学文学部卒、同大学院文学研究科心理学専攻博士後期課程単位取得退学。神戸親和女子大学教授などを経て、2012年京都橘大学健康科学部心理学科教授。心理臨床センター長、大学院健康科学研究科研究科長、学術情報部長を経て、2019年から学長。専門は臨床心理学。

大学教育の使命は「総合知」を育むこと

――政府の「教育未来創造会議」が5月に提言を出し、文部科学省などが提言の具体化に向けて動き出しています。日比野学長は有識者メンバーの一人ですね。

どうして私に声がかかったのかはわかりませんが、京都橘大学が2021年に工学部をつくり、地方の大学で一歩踏み出した取り組みをしているからではないでしょうか。東京工業大学の益一哉学長が入っているので、国立大学の男性学長と私立大学の女性学長を望んだのかもしれません。実際、構成員の男女比は重視していたようで、ワーキンググループの有識者15人のうち8人が女性でした。

教育未来創造会議は9月に解散し、提言を受けて各省庁が具体的な施策を検討しています。提言内容は134項目にわたりますが、2031年度までの工程表も9月に公表されています。

――第1回の会議が昨年12月27日で、提言を出したのが今年5月10日ですから、提言を出すまで4カ月余り。政府の会議としては異例の早さです。

早く目標を立てて動き出さなければと危機感があったようです。この間に本会議が3回、ワーキンググループの会議が4回ありました。教育未来創造会議は有識者15人以外に、文部科学相、財務相、経済産業相などの関係閣僚10人が入っています。議長は岸田首相です。ですから提言内容を必ず実現することが各省庁に求められています。

――提言はデジタル人材の育成や理系を増やすこと、修学支援制度、リカレント教育など多岐にわたりますが、教育関係者の間で話題になっているのは、理系の学生を現状の35%から5割程度に増やすという内容です。

そこばかりが強調されて報じられたこともあり、誤解されている面があります。文系の大学にとっては差別的に聞こえかねません。「自分たちは建学の精神を掲げて努力しているのに、あんまりじゃないか」「理系だけ重視するのではなく、それぞれの大学を支援してほしい」という意見を肌で感じます。

私は「提言内容を説明してほしい」と要請されて説明に行く機会がありますが、誤解されないように気をつけて説明しても、聞く側の胸に刺さるところがあるようです。よほど気をつけて丁寧に説明しないと、誤解を生んでしまいます。

――理系5割という数字が独り歩きしている面があります。提言をきちんと読むと、文系と理系の壁を超えた「総合知」を学ぶ必要性をあちこちに書いてあります。高校の早い段階で文系と理系に分かれることの問題点も指摘しています。

大学による高等教育の使命は「総合知」を育むことにあります。理系の人は専門分野だけでなく、文系の学問に触れることで視野が広がり、新しい価値創造に役立ちます。文系の人も最低限、データを読む力が必要です。提言が目指したのは「総合知」です。

会議の中では、「文系の学びも大事だ」という発言が大臣からもありました。提言は、ゴリゴリの理系を目指したものではありません。

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