復活!体験学習のチカラ
子どもたちが「自由に外遊びできる環境」を作って半世紀 プレーパークせたがや
2022.10.19

あれはダメ、これもダメ……。近頃の公園は禁止事項や細かいルールが多く、子どもがのびのびと遊べる場所ではなくなってきています。そうしたなか、子どもたちが屋外で思いっきり遊べる「冒険あそび場(プレーパーク)」をつくる活動を続けてきたのが、認定NPO法人プレーパークせたがや。1979年から東京都世田谷区と協働し、現在区内で四つのプレーパークを運営しています。その取り組みについて、同法人理事のアタル!さんにお聞きしました。※写真は、プレーパーク内で焚き火をする子どもたち(写真は表記のあるものを除き、認定NPO法人プレーパークせたがや提供)
2004年、当時まだ幼児だった2人の子どもと共にプレーパークに出会い、世話人(運営ボランティア)となる。本職はコピーライター。2013年から2期、地元公立小学校PTA会長を務めるなど、地域に子どもの遊びの大切さを伝える活動を行う。
外遊びを通して「野生」が育つ
手作りのウォータースライダーを滑り降りたり、木で作ったブランコに揺られたり、屋根によじ登ったり、七輪を囲んで炭に火をつけたり…。閑静な住宅街の中にある「駒沢はらっぱプレーパーク」では、子どもたちが思い思いに遊んでいます。一角にある防音室からかすかに聞こえてくるのは、ドラムの音。常連の高校生らがバンドを組み、プレーパークで開催予定のフェスに向けて練習しているのだそうです。

「プレーパーク」と呼ばれる子どもの遊び場づくり事業は全国各地で行われていますが、最初期の1970年代から活動してきたのが、現・プレーパークせたがや。子どもの遊び環境に疑問を抱いたある夫婦が、ヨーロッパの冒険遊び場に感銘を受けたことをきっかけに、住民たちが自らの手で遊び場をつくりました。その後世田谷区と協働し、区内で四つのプレーパークを運営してきました。2005年にNPO法人化してからは、プレーパークのない場所でも子どもたちが自由に遊べるよう、公園などに出張する「プレーカー事業」なども行っています。
千葉大学園芸学部の木下勇研究室が小学生2986人を対象に調査したところ、約8割が平日の放課後に外遊びをまったくしていませんでした。認定NPO法人プレーパークせたがや理事のアタル!さんは「塾や習い事で忙しいというだけでなく、自由に外遊びができる場所や環境がないということが大きいでしょう。私たちも常に周囲の目を気にせねばならず、子どもの遊びへの非寛容さを日々痛感しています」と嘆きます。
「社会が洗練され、コンプライアンスが強化されること自体は悪いことではありませんが、どんなに社会的状況が変わっても、人は裸で生まれてきます。成長するにつれて理性を獲得していくわけですが、動物としての野生の部分も育たないと、バランスが壊れてしまうのではないでしょうか」
アタル!さんによると、そうした「野生」の部分は、遊び、特に屋外での自然の中での遊びを通して育つといいます。陽差し、風、空気の匂い、暑い、寒いなどを感じながら、身体を動かし、危ないことや汚いこと、ずるいこと、ケンカもしながら、子どもは体験を通して学んでいきます。ここまでは大丈夫、これは危険だと、自分で判断する力や対処する力も磨かれていきます。「屋内の遊び場や整備されすぎた公園は、安全ではあっても想定外のことが起こりにくい。でも生きるって本来、想定外の連続。子ども時代にいろんな想定外を経験してほしいんです」
