復活!体験学習のチカラ

家族との読書や外遊びは子の将来に大切な「時間投資」 中室牧子・慶応大教授に聞く

2022.10.26

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葉山 梢
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コロナ禍では学校行事や家庭での体験活動が大きな制約を受けました。子どもの発達への悪影響を回避するために、親はどのようなことを心がければいいのでしょう。経済学的な手法で教育問題を分析している慶応義塾大の中室牧子教授に聞きました。

中室牧子

話を聞いた人

中室牧子さん

慶応義塾大教授

(なかむろ・まきこ)1998年慶応義塾大卒業。米ニューヨーク市のコロンビア大で博士号を取得(Ph.D.)。日本銀行や世界銀行などを経て現職。専門は教育を経済学的な手法で分析する「教育経済学」。著書は、発行部数累計30万部のベストセラーとなった「『学力』の経済学」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)や、「『原因と結果』の経済学」(津川友介氏と共著、ダイヤモンド社)など。

対話が減り、学習意欲が低下か

――コロナ禍で子どもたちにどのような影響が出ているのでしょうか。

まず、コロナ禍の学校で子どもたちの学校生活にどのような変化があったのかをお話しします。一つ目は学校行事です。埼玉県教委が2019~20年度に計3回、県内の公立小中学校を対象に実施した調査によると、94%の学校で減少しています。

二つ目は学校の中の教育活動です。小学校では20年度、中学校では21年度から新しい学習指導要領が全面実施となり「主体的・対話的で深い学び」が始まりました。しかし、20年度の一斉休校直後に実施された2回目の調査では、小学校の28.0%、中学校の24.7%が「対話的な活動は極力行わないようにしている」と回答しました。ホワイトボードやICTを用いた意見集約はするものの、直接対話をしないと回答した学校も30%を越えていましたので、感染対策が求められる中では、授業にも影響があったようです。

三つ目に、埼玉県が毎年実施している学力調査を受けなかった小中学校も15%ありました。

私たちの研究室で実施した分析では、対話的な活動がなかったことは、学力には影響を与えていませんが、学習意欲の低下につながったことが示唆されています。また、海外でシステムの故障によって学力調査が実施できなかった年に生徒の学力が下がったことを示す研究もあり、学力調査の未受験が与える影響も気になるところです。

佐賀大の浅川慎介助教と大阪大の大竹文雄・特任教授らが奈良市の小学校の算数テストの結果を分析した研究では、2019年度3学期に短期的に低下しましたが、その後は回復してきています。ただし、生活状況が悪い子どもたちやもともと学力が低かった子どもたちへの負の影響は大きく、格差が拡大したこともわかっています。一部の子どもが取り残されないようにすることが重要だと思われます。

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