2023大学入試の動向

2022年共通テストの理数系難化が医学部・医大受験生に与えた影響は23年ではどうなるか 予備校専門家に聞く   

2022.12.02

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鍛治信太郎
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大学入学共通テストとしては2回目の実施となった2022年1月の共通テストは理系科目の難化が際立ちました。特に生物、数学の平均点の落ち込みが激しく、次いで化学です。数学、化学、生物を選ぶことが多い医学部・医大志望者には大きな影響を与えました。難化の結果、志望者は個別試験でどのように動いたのでしょうか。また、その分析から23年の医学部受験をどう見通すのか。医系専門予備校メディカルラボ・本部教務統括の可児良友さんに聞きました。(写真は熊本大学=記事中に登場します)

可児良友

話を聞いた人

可児良友さん

医系専門予備校メディカルラボ・本部教務統括

かに・よしとも 1991年から大手予備校で受験生の指導に携わり、多くの医学部・歯学部志望者を合格に導く。マンツーマン授業による医学部受験の指導メソッドを作り上げた。2006年に医学部専門の個別指導予備校、メディカルラボ(本部・名古屋市)の開校責任者となる。カリキュラムの監修や講師・スタッフの統括を担い、また生物の講師として現在も医学部受験の最前線で指導する。著書に「偏差値20台から医学部合格したけど、何か質問ある?」(講談社)などがある。

平均点が下がると、実は強気に攻めるチャンス

――どのように難しくなったのでしょうか。

共通テストで求められる力は「知識・技術」より「思考力・判断力・表現力」です。「理解を伴う知識・技能」が必要で、処理するべき情報量が増えました。例えば数学Ⅱ・数学Bで、問題文の行数が前回の1.4倍と長くなりました。同じ「数列」の問題でも、これまでなら見れば数列であることが一目瞭然。すぐに解き始められます。ところが、22年のテストでは歩行者と自転車が移動と停止を繰り返すというシチュエーションになっていて、一見しても何の問題なのかわかりません。理解に手間取るのに、1問あたりに使える時間は同じです。一方、英語では、発音やアクセントなどの知識を問う代わりに思考力を問う形式に変わり、むしろ簡単になった印象です。日常生活に近いテーマの読解問題で、英語の細かい知識がなくても社会常識があれば解けてしまうのです。

河合塾が公表している医学部出願予定者の集計データによると、最低合格ラインの得点率(全科目計)は75%(900点満点で675点)で、前回(21年1月実施)の80%(900点満点で720点)から下がりました。

――受験生の個別試験への対応にどのような影響を与えたとみられるでしょうか。

例えば、例年なら東京医科歯科大を目指せるような実力のある生徒が、志望大学を下げていました。自己採点結果が事前の見込みより低いと慎重になり、安全志向になります。成績上位者はそれほど気にしませんが、ボーダーラインぎりぎりの生徒ほどそうなります。本来はこういう時こそ逆に強気に出るチャンスなんですが。まだ高校生の年齢で、しかも初めて経験する大学受験でリスクを取りに行くのはなかなか難しいでしょう。

こうした影響で、国公立の医学部、医科大(前期試験)の合格可能性50%ラインに相当する得点率は前回より軒並み下がりました。これをもう少し詳しくみると、得点率80%以上の上位校の下げ幅はほとんどが5ポイント以内にとどまりました。これに対し得点率70%台では6ポイント以上下がった大学が多く、9ポイント下がった大学もあります。テストが難しくなると上位と下位の格差が広がると言えます。

一方で、理数系科目の難化の影響で志願者が増えたと考えられる大学もあります。滋賀医科大は国語と社会の配点が大きいユニークな医学部で、数学、理科の配点割合が他の医学部より相対的に低くなります。前期日程の志願者が昨年の250人から405人と62%増えています。また、数学の配点割合が滋賀医科大よりさらに低い熊本大医学部も昨年の332人から447人へと35%増えています。

名古屋大医学部・前期日程の志願者は昨年の345人から150人に激減しましたが、これは前回なかった2段階選抜を実施したからです。第1段階選抜の通過基準を「共通テスト900点満点中700点以上」に設定してしましたが、これほど平均点が下がるのは予想外だったと思います。

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