2023大学入試の動向

私大専願者に「共通テスト離れ」 問題内容がセンター試験と違いすぎ

2022.12.06

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中村 正史
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大学入試改革の成果として、共通テストが導入されて来年で3年目を迎える。しかし、私立大志望者の間では共通テストを受けようとしない「共通テスト離れ」が起きている。私立大にも拡大していった2020年までのセンター試験の時にはなかったことで、入試改革の成否を左右しかねない事態だ。「共通テスト離れ」はなぜ起きているのだろうか。(写真は、2022年の共通テストに臨む受験生=1月15日、北海道大学)

センター対策は私立大対策でもあった

大学入試センターが6日に発表した来年の共通テストの出願者は51万2581人で、前年より約1万7800人(3.4%)減った。かろうじて50万人台を維持したものも、予備校などでは「50万人を超えるのはこれが最後だろう」と言われている。なぜなら18歳人口の減少以外に、共通テストを敬遠する受験生が増えているためだ。

河合塾によると、10月の全統共通テスト模試では、国公立大の志望者は前年比97.7%だが、私大専願者は同95.2%。私大専願者で共通テストを利用する入試方式を志望しているのは同93.9%だ。

減っているのは、私大専願者に多い共通テスト3教科以下の志望者で、2年前に比べると1割以上少なくなっている。共通テストを受けない人が増えていることが見て取れる。

駿台予備学校の10月末の共通テスト模試でも、国公立大の志望者は前年比97%に対して、私立大の志望者は93%。私大専願者のうち、学力下位層が受けていないと分析している。

河合塾教育研究開発本部の近藤治主席研究員は「2年目の今年1月の共通テストから私大専願者が受けなくなっている傾向が見られ、願書は出しても当日受験しなかった人が増えました。今年の模試を見ると、共通テスト離れの傾向がさらに強まっています。来年1月の共通テストは願書すら出さない受験生が増えると思います」と話す。

さらに「9月からの出願開始の時点で共通テストを志望していても、総合型選抜や学校推薦型選抜で年内に合格をもらう受験生が増えているので、当日の受験者はもっと減る可能性があります」という。

私大専願者は、河合塾の模試の全受験者のほぼ3分の1を占める。地方では国公立大を第一志望にする受験生が多いが、首都圏や関西などの都市部には有力私大があるため、私大専願者が相当数いる。駿台によれば、東京都の共通テスト出願者のうち、国公立大型の5教科を受けるのは3分の1にすぎず、神奈川県や大阪府で6割、地方だと8割以上になる。

共通テスト離れがなぜ起きているのだろうか。駿台予備学校の石原賢一・進学情報部長は、次のように話す。

「従来のセンター試験と、21年からの共通テストでは、問題の内容が全く違います。従来であれば、センター対策模試を受けていれば私立大の対策にもなりましたが、共通テストのような問題は私立大ではつくれないので、私大専願者は共通テスト模試を受けない傾向が出ています」

河合塾の近藤氏も同様の見方だ。

「センター試験は、高校で学んできた基礎的な学力を測るオーソドックスな問題でした。私大専願者にとっては、センター試験対策の勉強をすれば私立大の一般入試(現・一般選抜)対策にもなっていました。しかし、共通テストは全く別物で、私立大の入試問題とは傾向が違う問題になりました。私大専願者は通常の入試対策に加えて、共通テストだけのために余分に勉強しなければならず、うまみがありません」

今年1月の共通テストで、数学Ⅰ・Aや数学Ⅱ・Bの平均点が昨年より20点近く下がり、数学Ⅰ・Aや生物、化学などの平均点が過去最低になるなど難しかったことも、共通テスト離れに拍車をかけているようだ。

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