2023大学入試の動向
私大専願者に「共通テスト離れ」 問題内容がセンター試験と違いすぎ
2022.12.06

かつての共通一次のようになる
河合塾の近藤氏も同じような見方をしている。
「10年代以降の大学入試改革の議論の中では、当初、大学入学希望者のための試験と基礎学力を測る試験の二本立てにしようという議論がありましたが、基礎学力の試験は途中で消え、共通テストだけが残りました。現状を見ると、共通テストは学力上位層向けの作問になっており、結果的に国公立大プラス、難関私大が使うテストになると思います。私大専願者が受けなくなれば、かつての共通一次のように、国公立大を受ける人のための試験になるのではないでしょうか」
そして石原氏は「来年の共通テストの出願者が50万人を上回ったとしても、50万人を超えるのはこれが最後でしょう。これまでは18歳人口の減少に比べて、センター試験の出願者の減少は緩やかでしたが、今後は18歳人口の減少率に合わせて減り、いずれ35、36万人まで減っていくと思います」と予測する。
共通テストを運営する大学入試センターは、大学から徴収する成績提供手数料を21年の750円から、22年に1200円、23年に1500円と倍増し、収支改善を図っている。センター試験当時は570円だった。
これについて石原氏は私立大側の見地から「手数料が財政的に負担になる私立大の中には共通テスト利用をやめるところが出てきかねません。実際、私立大に共通テスト利用入試で入学しているのは、入学者の約5%にすぎません」と言う。
共通テストの受験者が減れば、大学入試センターは財政的に厳しくなる。受験料を上げれば、さらに共通テスト離れが加速しかねない。
そこで石原氏はこんな提案をする。
「大学入試センターが総合的な入試問題をつくる機関になって、大学に有償で提供すればいいと思います。また、私立大向けの共通試験が必要です。私立大学連盟や私立大学協会などがつくればいいのではないでしょうか」
学力の3要素を問おうと、問題内容を大きく変えた共通テストの受験の現場で起きている事態は、私立大を含めた日本の大学入試や高校教育、大学教育にも影響を及ぼしかねない。