一色清の「このニュースって何?」
軽EVが日本カー・オブ・ザ・イヤーに → 自動車を動かす電池の進化を知ろう
2022.12.16

日々のニュースの中に「学び」のきっかけがあります。新聞を読みながら、テレビを見ながら、食卓やリビングでどう話しかけたら、わが子の知的好奇心にスイッチが入るでしょうか。ジャーナリストの一色清さんが毎週、保護者にヒントを教えます。(写真は、新型軽EVの生産開始式典で、「サクラ」「ekクロスEV」と並んで記念撮影に応じる日産自動車の内田誠社長〈左〉と三菱自動車の加藤隆雄社長=2022年5月20日、岡山県倉敷市の三菱自動車水島製作所)
地球温暖化に歯止めをかけるカギ
自動車評論家らが選ぶ2022年の「日本カー・オブ・ザ・イヤー」に日産自動車と三菱自動車が共同で手がけた、軽自動車の電気自動車(EV)「サクラ」と「ekクロスEV」が選ばれました。EVは地球温暖化対策として普及が期待されているクルマですが、一回の充電で走ることができる距離が短いことや値段が高いことが課題になっています。このクルマはこうした課題のうち値段が高いという課題に絞って乗り越えました。国や自治体の補助金を使えば100万円台で買うことができ、軽のガソリン車より安いかもしれないくらいの値段です。一方、走行距離は約180キロと短く、街乗り用として割り切ったクルマになっています。街乗り用でかまわないというユーザーはそれなりにいて、購入予約がたくさん入っています。
この値段で走行距離も延びればもっといいのですが、そのためにはEVの心臓部である電池がもっと進化する必要があります。世界のクルマがガソリン車からEVに変わり、地球温暖化に歯止めをかけるには、電池の進化がカギを握っているということです。今、電池は人類にとってとても大きな意味を持つ製品になっています。電池の歴史と未来について、ざっくりと知っておきましょう。
わたしたちが電池と聞いてイメージする化学電池には1次電池と2次電池があります。1次電池は充電できない使い切りの電池で、2次電池は充電できる電池です。蓄電池とも言います。
1次電池は2千年以上前にあったようです。イラクのバグダッド付近で見つかったつぼには銅の筒と鉄の棒が入っていて、何らかの液体も入っていた痕跡がありました。電池だったのではないかとみられ、「バグダッド電池」とよばれています。
今の電池の原型は1800年にイタリアのボルタが発明した「ボルタ電池」です。正極に銅、負極に亜鉛、電解液として希硫酸を使い、電気を発生させました。電圧の単位をボルトというのは、ボルタからきています。
ボルタ電池は電解液を使っていましたので、ちょっとしたことで液漏れが起こりました。そこで1888年、ドイツのガスナーは電解液を石膏(せっこう)で固めた電池を発明しました。液体がなくなったことから乾いた電池ということで「乾電池」とよばれるようになりました。余談ですが、この3年前に日本で屋井先蔵という人が乾電池を作っていましたが、屋井は特許出願をしなかったため、発明者としてはガスナーが名を残しています。その後、乾電池は小さな進化を遂げつつ、今もいろいろな製品に使われています。