鉄ちゃんの育て方
「鉄道問題」は社会だけじゃない! 理科や算数、適性検査でも この冬出そうな問題は?
2022.12.21

鉄道にまつわる入試問題といえば社会で多く出されますが、実は理科や算数、公立中高一貫校の適性検査でも頻出です。今年は鉄道開業150周年で、年明けの1~2月に行われる2023年度入試でも出題される可能性があります。首都圏を中心とする中学・高校入試の過去問題集、受験案内を発行する出版社「声の教育社」の後藤和浩さんに解説してもらいました。(写真は、出発時刻を迎えた「なつかしのあさひ号」=2022年11月12日、JR新潟駅、茂木克信撮影)
(ごとう・かずひろ)塾講師を10年経験したのち、声の教育社へ編集者として入社。 現在は渉外業務が中心で、講演会や動画授業の講師も務める。
太陽系の惑星を中央線に並べてみると……
――鉄道にまつわる問題は、社会については毎年のようにどこかの学校で出題されており、EduAでも取り上げてきました。その他の教科ではどうでしょうか。
理科は鉄道(電車)の要素を出題に組み込みやすく、以下のようなテーマでよく見られます。
・温度によるレール(金属)の伸縮
・発車・停車時の慣性
・自動車ではなく電車を利用することによるエコロジー面での効果
・踏切警報音や警笛のドップラー効果
・モーターの仕組み
ただし、ほとんどは計算の題材にとどまっています。その中で、2014年度の法政大学中学校(東京都三鷹市)の出題は実在の駅名が出ていたり、走っている電車の窓からボールを落としてみたり、車両の重さについて考えさせたりと、非常にユニークなものでした。

また、10年度の穎明館中学校(東京都八王子市)でも「太陽の位置を高尾駅に、地球の位置を西八王子駅に置いて、他の惑星がどのあたりになるかを調べてみました」という出題がありました。太陽系を中央線に並べてみるという壮大かつ身近な内容で、それぞれの設問も「この電車(太陽の光)が吉祥寺駅に到着する時間を書きなさい」など、工夫されていて面白いですね。

解答:

頌栄女子学院中学校(東京都港区)の21年度第1回入試では、「あなたが鉄道会社の社長になって地下鉄をつくることになったと仮定して」線路と駅のようすを書かせる出題もありました。

解答例:

――算数はどうでしょう?
算数において鉄道をテーマにした出題となると、ほぼ「通過算」か「旅人算」になります。「通過算」は電車や車がある地点を通り過ぎたり、鉄橋やトンネルを通ったりする際の速さ、時間、道のり等を求める問題、「旅人算」は2人以上が同じ方向に動いたり、向かい合って動いたりしたときの出会うまでの時間や道のりなどを求める問題です。しかしながら、あくまでも計算の題材として鉄道が採用されているにすぎず、目を引くような出題は見つかりません。
ただ数年前、ある中学校の「入試意見交換会」で、電車の通過算の問題が話題になったことがありました。算数の作問担当の先生が説明中、出席していた大手塾の講師から、「列車については別の中学校でも似た出題があったが、そちらは車両間の連結部分についても考えさせた。本校ではそこを不問にしたが、連結部分について何らかの言及があってもよかったのではないか」と質問がありました。それに対して先生は、「そこについては作問の段階で議論になったが、『しっかり解いて合格した!』という手応えを優先し、難しくなるのであえてスルーした」と答えていました。その学校らしい姿勢で、入試問題が学校の顔であるというのは本当だなと思いました。