2023大学入試の動向

女子の理工系志望が急増 コロナに伴う社会の変化がきっかけか

2022.12.22

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中村 正史
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理工系に進む女子が少ないことが長年の課題になっているが、2023年大学入試に向けた予備校の模擬試験の動向から、女子の理工系志望者が急増していることがわかった。背景として、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う社会の変化が高校生の関心事や学部選択に影響したという指摘が出ている。これから学部選択の男女の差は徐々になくなっていくという見方が予備校の間では強い。(写真は、宮崎大学で開かれた高校1、2年の女子生徒を対象にしたサイエンス体験講座=2021年3月)

電気・電子、応用化学でも女子の志望が大幅増

河合塾の10月の模試の結果から学部系統別の志望動向を見ると、女子の変化が目立つ。

私立大学では、法・政治の志望者は前年同期の模試と比較して99%だが、女子だけでみると105%、経済・経営・商は101%に対して女子は104%と、社会科学系において女子の志望者が増えている。

理系はもっと顕著だ。理は全体の100%に対して女子107%、工は98%に対して女子105%、農は104%に対して女子108%、医は109%に対して女子113%となっている。

河合塾教育研究開発本部の近藤治・主席研究員は、次のように話す。

「理系を細かく見ると、工の電気・電子は全体で100%に対して女子117%、応用化学101%に対して女子107%と、工学部の代表的な学科でも増えています。理、工の志望者は全体では増えていませんが、女子だけ切り出すと、理工系でものすごく増えています。これだけの勢いで女子の理系志望が増えることは、単年では経験がありません」

個別大学で見ても、女子の理系志望が増えているのがわかる。芝浦工業大や東京電機大、東京農業大など理系10大学で見ると、全体の志望者は前年をやや下回っているが、女子は前年比103%。一方で、女子14大学(女子大)の志望者数は同94%と減っている。

MARCH(明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大)の志望者増を引っ張っているのも女子だ。近藤氏は「明治大、中央大、法政大など、従来は男子のイメージが強かった大学で女子の志望者が大幅に増えており、女子のキャリア志向に変化が見られます」と話す。

国公立大も同じような状況だ。志望者が増えているのは、筑波大や横浜国立大、金沢大、広島大などの準難関大10校だが、準難関大の人気を支えているのは女子、中でも女子の理系志望者が増えていることだ。旧7帝大など難関10大学でも、女子は文系では昨年より減っているが、理系は増えている。

近藤氏はこう話す。

「国公立大の文系で志望者が減少しているのは、外国語、国際、生活科学と、従来は女子が多かった学部で、最も減少幅が大きいのが外国語、国際です。今の高3はコロナの感染拡大が始まった20年度に高校に入学した生徒たちで、3年になって文系から理系に志望変更することはあまりないので、入学時から理系や情報系を目指していたと考えられます」

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