一色清の「このニュースって何?」
与党税制改正大綱が決まる → 税金の仕組みを知っておこう
2022.12.23

日々のニュースの中に「学び」のきっかけがあります。新聞を読みながら、テレビを見ながら、食卓やリビングでどう話しかけたら、わが子の知的好奇心にスイッチが入るでしょうか。ジャーナリストの一色清さんが毎週、保護者にヒントを教えます。(写真は、2023年度税制改正大綱の文書を持つ自民党の宮沢洋一税調会長〈右〉と公明党の西田実仁税調会長=22年12月16日、国会内、上田幸一撮影)
税金をほとんどとらない国もある
わたしたちが納める税金の仕組みを税制といいます。税制は社会の変化に応じて毎年改正されます。新年度の4月から適用される税制は1月に開かれる通常国会で審議されます。そのため前年の12月に与党税制改正大綱という新しい税制案がまとまります。与党が圧倒的多数の今の国会では、与党が決めた税制案がそのまま法律になる可能性が高いため、それが大きなニュースになります。
税制が変わることは、わたしたちの生活にも影響があるので、関心を持つ必要があります。ただ、税金の種類は多く、複雑なため、理解するには知識が必要です。まずはザックリ理解するための基礎的な知識を身につけておきましょう。
税の制度は、人類の歴史の中で国や自治体の形ができるとほぼ同時にできたと考えられています。日本ではっきり税の制度ができたことがわかるのは、飛鳥時代の「大化の改新」からです。人民や土地が国家のものであるとする「公地公民」が定められ、中国の制度をまねた「租庸調」といわれる収穫物や労働や特産品などを国に提供する制度ができました。その後、年貢といわれる米などの収穫物が税の中心になり、明治時代になって貨幣で納める今の税金の形ができました。税の字のへんである「のぎへん」は、穂を実らせた穀物を表しているとされ、かつて税の中心が米であったことを示しています。
税が必要なのは、国や自治体を運営するのにおカネが必要だからです。軍隊、警察、消防などの組織を動かすにも、道路や橋を造るにも、学校を運営するのにもおカネが必要です。また、高齢になったり病気になったりして働けなくなった人を支えるにもおカネが必要です。こうしたものは国民だれもが利用する可能性のあるものなので、国民が税金の形で負担しています。
世界の国の中には、税金をほとんどとらない国もあります。サウジアラビアなどの中東の国や東南アジアのブルネイなどです。こうした国は石油や天然ガスが豊富にあり、輸出によって国がもうかっています。税金に頼らないでも国を運営することができるわけです。ただ、こうした地下資源が豊かな国はまれで、世界の多くの国は日本と同じように国民からそれなりの税金を徴収して運営しています。
では、現在の日本の税制はどうなっているのでしょうか。税金は、どこに納めるかでふたつに分かれます。国税と地方税です。国が課税し、国に納める税金を国税といいます。種類としては個人の所得にかかる所得税、会社など法人の所得にかかる法人税、財産を相続するときにかかる相続税、個人から贈与により財産を取得したときにかかる贈与税、商品の販売やサービスの提供に対してかかる消費税、酒類が出荷されるときにかかる酒税、たばこにかかるたばこ税、自動車を持っている人にかかる自動車重量税などがあります。
地方税は地方における行政府が課税し、行政府に納める税金のことです。所得に応じてかかる住民税、事業をしている個人や法人の所得にかかる事業税、土地などにかかる固定資産税、消費税の一部である地方消費税、自動車を持っている人にかかる自動車税などがあります。納税者が国税か地方税かを意識することはあまりありませんが、国の仕事と地方自治体の仕事は分かれているので、税金も行き先が分かれています。