「測りたい力」の全貌は見えたか ~3年目の共通テスト~

進学校の先生の見方⑤ 鷗友学園女子「3年目で方向が示された」

2023.01.26

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柿崎明子
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1月14、15の両日、3年目となる大学入学共通テストが実施されました。数学の難化などが受験生に衝撃を与えた2年目と比べ、今回はどうだったのでしょうか。進学校の先生に聞きました。第5回は東京都世田谷区の私立中高一貫女子校、鷗友学園女子です。(写真は同校提供)

平見亜輝彦さん 鷗友学園女子中学高校 進路指導部長、物理科教諭

話を聞いた人

平見亜輝彦さん

鷗友学園女子中学高校 進路指導部長、地学科・物理科教諭

(ひらみ・あきひこ)1999年鷗友学園女子中学高校着任。

出題者の意図を読める生徒が有利

――共通テストも3回目を迎えました。この3年間をどのように見ましたか。

初年度は高3の担任をしていました。その時はどんな問題が出題されるのか読めずに、生徒も教員もどこか不安を抱えていました。1年目は手探りで草をかき分け、2年目は道標が立って方向性が示され、今年は道が踏み固められ方向がはっきり示されたという感じです。

今年の問題に関しては、1年目よりも2年目に近い内容だと思います。昨年度多くの科目で読む量がかなり増えましたが、今年はさらに読む量が増えた科目もあり、今後は2年目の方向でやっていくという、大学入試センターのメッセージを感じました。

――各教科の先生方の反応はいかがでしたか。

数学Ⅰ・Aのバスケットボールのシュートの軌道の問題ですが、正解にたどり着くまでには別のルートもあり、出題者が意図した考え方ではなく、ほかのルートで考えた生徒は答えに行き着けずに、とまどったのではないかと話していました。そういう意味では思考力だけでなく、出題者の意図を読めるような力も求められています。

国語に関しては、前年と比べてあまり変わりないようでした。センター試験のときは問題文があって、それに直接答えるという問い方でしたが、共通テストになってからは話し合いの場面や、複数の資料が提示されることで、答えに行き着くまでに手順を二つ三つ挟むような形になっているので、そのような設問の仕方にも慣れていく必要があると思います。

英語は、しっかりと英文を読んでいる生徒が解ける内容だったと思います。本校では中学から英語の授業はオールイングリッシュで、多読もやっています。英文をしっかり読み込んでいる生徒にとっては、解きやすかったのではないでしょうか。本校生徒にとって、センター試験の時よりも、共通テストになってからの方が良い流れになっていると感じています。

地歴は世界史Bが難しかったですね。すべての大問が会話文で、資料も増えているし、文字だけの資料も複数あって、読む量が圧倒的に多くなっていました。

生物は、共通テストになってからかなり難化しています。センター試験の時はむしろ他の科目よりも点を取りやすく、平均点がこんなに下がることはありませんでした。問題の文章量が多く、解答も知識だけでなく資料を読み込んで考える力が問われていると感じました。

物理は、これまでとそれほど変わらない奇をてらわない問題と、探究型の問題とのバランスがよく、評価できる内容だったと思います。本校では中学から、答えがわからないようなテーマを投げかけて、トライ&エラーを繰り返す仮説検証型実験の授業をおこなっていることも、長い目で見れば力になっていると考えています。

全体を通してセンター試験よりもテクニック的な要素は薄れており、思考力、読解力を測る試験としては評価できると思います。それが狙いなのでしょうが、対策はたてづらいですね。

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