「測りたい力」の全貌は見えたか ~3年目の共通テスト~

進学校の先生の見方⑥ 福島県立福島高校「膨大な文章を“読む体力”が必要」

2023.01.30

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柿崎明子
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1月14、15の両日、3年目となる大学入学共通テストが実施されました。数学の難化などが受験生に衝撃を与えた2年目と比べ、今回はどうだったのでしょうか。進学校の先生に聞きました。第6回は福島市の福島県立福島高校です。(写真は同校提供)

武田 浩さん 福島高校進路指導主事、地歴科教諭(世界史担当) 

話を聞いた人

武田 浩さん

福島高校進路指導主事、地歴科教諭(世界史担当) 

(たけだ・ひろし)2012年福島高校着任。

世界史が「まるで国語」

――3年目の共通テストは、どのように感じましたか。

初年度は大学センター試験よりも平均点が高く、2年目は数学ショックの影響で大幅に下降、今年は3年目なので、1年目と3年目の間の平均点になるだろうとは予測していました。ほぼその通りになりましたね。

本校の教員は共通テストについて、「大学センター試験とはべつもの」と話しています。センター試験はひとつの文章を読んでそれに答えるというやりかたでしたが、共通テストはどの科目も複数の資料、会話文などを組みあわせ、そこから解答を導くというやりかたに変わりましたね。

――文部科学省が狙っていた、読解力、思考力が測れる内容になっていますか。

評価できる点と、そうではない点の両方あります。思考力はともかく、読解力については疑問もある。国語と英語、また私の担当している世界史もそうですが、問題の文章量がかなり多くなっています。センター試験のときには問題文をじっくりと読んで、その教科の力を使って答えることができました。

あれだけの文章量だと教科の純粋な思考力と言うよりも、情報処理能力の方が重視されているように感じます。問題文が増えたからといって、読解力を問えるわけではない。読解力を測るには、時間が足りないと感じます。

――各教科について、どう見ましたか。

世界史は、聞かれている内容は教科書に掲載されている基本的なことですが、まず誘導の会話文や資料を読んで、いざ設問に当たったときにまた問題文にもどらないと解けない。世界史の知識というよりも、答えを探すためにもう一度問題文をていねいに読み直す煩雑さがありました。世界史Bについて生徒は「まるで国語のようだった」と感想を述べていました。

東北地区の高校も、平均点が8割を超えた学校は少ないのではないでしょうか。高得点を取るのが難しい問題だったと思います。

地理も同様に、複数の資料や図、グラフが組み合わされて高得点が取りにくい内容でした。センター試験のような、知識を問う問題はなくなりましたね。

一方で日本史の教員は「センター試験のようだった」と述べていました。資料もあり問題文もそれなりのボリュームなのですが、設問はそれらを使わなくても解ける内容だったようです。昨年は点数が低かったので、調整したのかもしれません。思考力と知識をリンクさせた問題を取り上げ、じっくりと問題文を読み、日本史の知識を使って解くような内容にして欲しい」と話していました。

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