算数・数学 学びのヒント
数学こそ「好きこそものの上手なれ」 一人でも多くの「数学好き」を増やすため出前授業を再開
2023.02.17

算数や数学は、公式や解法を暗記し、数字を当てはめて正しく計算できれば、正解にたどり着ける――。短絡的な受験勉強の弊害か、そんな「暗記数学」の迷路に入り込み、分数やパーセント(%)の本質を理解しないまま大学生になる若者がいます。数学者で、小学生から大学生まで幅広く数学の魅力を教えてきた桜美林大学リベラルアーツ学群の芳沢光雄教授が、中学・高校受験期の子どもにこそ理解してほしい算数・数学のツボを解説します。
まず「数学嫌い」減らすことから
政府の教育未来創造会議が、理系分野を専攻する大学生の割合を35%から50%に増やす目標を掲げたのは、昨年5月のことでした。新年になって、文部科学省の具体策の一端が明らかになりました。学部を理系に再編したり定員を増やしたりする大学を支援する方針だといいます。技術立国日本の将来が危ぶまれていることも、背景にあるでしょう。
もちろん、そうした対策は歓迎するものの、忘れている重要な問題があると思います。それは、日本の「数学嫌い」が続いていることです。TIMSS(国際数学・理科教育動向調査)の結果からも、国際平均値と比べて「数学嫌い」が多い傾向は明らかです。理系学問の基礎として必須の数学に関して、まず「数学嫌い」を減らすことが緊要な課題だと考えます。
筆者は45年間の大学教員人生で、1万5千人以上の大学生の授業を担当し、それとは別に約200校の小中高校の出前授業でも、1万5千人以上の児童・生徒に講演をしてきました。それらの経験から、「好きこそものの上手なれ」ということわざは、数学の学びにおいても当てはまると感じています。
そして、「数学嫌い」の生徒を一人でも「数学好き」にしたいと考え、コロナ禍で3年間近く中断していた出前授業を昨年末から再開しました。本年3月に大学では定年退職を迎えますが、出前授業は続けていこうと決意しました。
昨年末に訪れた東京家政大付属女子中学(東京都板橋区)と盈進中学(広島県福山市)は、過去にも訪ねている学校です。講演後に学校関係者から「これだけの人数で、皆が楽しく盛り上がったことは素晴らしい」と言われました。その要点は、どんなに大人数になっても一方通行の話ではなく、生徒が発する回答や質問を大切にし、生きた題材を用いて常に楽しく話すことです。