大学入試のゆくえ
島根大の総合型選抜「へるん入試」、導入3年の現状を大学が分析 入学後の成績は他選抜と同水準
2023.03.13

「年内入試」と呼ばれるようになった総合型選抜(旧AO入試)や学校推薦型選抜(旧推薦入試)の入学者が増えています。現在では一般選抜(旧一般入試)の入学者は5割を切っています。2021年度入試から、地元ゆかりの作家、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の愛称にちなんで、好奇心・探究心を重視する総合型選抜「へるん入試」を導入した島根大学の美濃地裕子准教授に、導入から3年経った現状を聞きました。(写真は、島根大学で行われた今年の共通テストの様子。へるん入試の導入で一般選抜の募集人員は減り、入試全体が変わった=1月14日、松江市の島根大学)
(みのじ・ゆうこ)広島県立広島女子大学文学部国文学科卒。島根県立高校の国語科教員を経て、島根県教育センター指導主事。2013年、島根大学教育・学生支援機構入学センター(現・大学教育センター)に着任。大学入試改革や高大接続事業を担当する。23年3月に退職し、4月から島根県立大学職員。
入学者の4人に1人は「へるん入試」
――好奇心・探究心を重視する総合型選抜の「へるん入試」を2021年度入試から導入して3年になります。募集人員や志願者数は拡大していますか。
島根大学は2023年度に材料エネルギー学部を新設し、7学部になりますが、へるん入試は医学部と人間科学部を除く5学部で実施しています。
初年度の2021年度入試では、へるん入試の募集人員は4学部で254人、島根大学の募集人員全体の22%でした。23年度入試では材料エネルギー学部が加わって募集人員は295人になり、全体の25%を占めています。入学者の4人に1人は、へるん入試で入っていることになります。
志願者は21年度の365人から、22年度は437人、23年度は500人の大台に乗りました。志願倍率は21年度の1.4倍から、22年度、23年度は1.7倍に上がっています。
初年度は周知が難しく、県内の受験生が3割でした。22年度からは県外からの受験生や理系学部の志願者が増えました。県外からの志願者は、岡山県や鳥取県、広島県が多く、兵庫県や愛媛県、大阪府などが続きます。長崎県や鹿児島県の志願者もいます。
へるん入試は、共通テストを課しません。総合理工学部は、当初は2次選考で理数基礎テストを課し、21年度は7学科中6学科、22年度は3学科が課していましたが、23年度はなくなりました。
島根大学には、ほかに共通テストを課す総合型選抜や学校推薦型選抜があり、人間科学部や医学部、教育学部、材料エネルギー学部が実施しています。総合型選抜と学校推薦型選抜をすべて合わせた募集人員は、大学全体の35%を占め、国立大学の中でも多いです。ゆくゆくはこの割合を40%にしたいという目標を持っています。
――へるん入試は、高校時代の活動を踏まえて、島根大学で何を学びたいかという「学びのタネ」を重視した入試です。
高校生には「学びのタネを明確にして島根大学に来てください」と伝えています。「学びのタネ」とは、好奇心や探究心に根ざした大学で学ぶ意欲で、へるん入試の根幹を成すものです。出願時には、高校時代に熱量をぶつけたものは何かを800字で書く「クローズアップシート」を提出します。探究活動、生徒会、学校行事、部活動など様々な内容が書いてあります。
選考は、調査書+クローズアップシート(80点)、読解力・表現力を測る筆記試験(100点)、志望理由書に基づく面接(100点)で行います。志望理由書には、40字で「学びのタネ」を書いてもらい、島根大学で何を、どう学びたいのかを面接で聞きます。