ハイスクールラプソディー

恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表の清田隆之さん・日本大学豊山中高  人と比べず全力で楽しんで

2023.03.24

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中村 千晶
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人の恋愛にまつわる話=「恋バナ」を聞き集め、現代の恋愛観やジェンダー、男性・女性の生きづらさなどを分析、発信している清田隆之さん。すべての始まりは「恋愛」に目覚めた男子校での体験だったようです。写真/髙橋奈緒(朝日新聞出版写真映像部)

清田隆之

話を聞いた人

清田隆之さん

文筆業、恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表

1980年、東京都生まれ。文筆業、恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表。早稲田大第一文学部卒業。これまで1200人以上の恋バナを聞き集め、「恋愛とジェンダー」をテーマにコラムやラジオなどで発信している。著書に「さよなら、俺たち」(スタンド・ブックス)、「自慢話でも武勇伝でもない『一般男性』の話から見えた生きづらさと男らしさのこと」(扶桑社)などがある。

中学から日大豊山に進学したのですね。

実家は東京の下町の電器屋。近所の幼なじみと外で遊んだり、少年サッカーをしたりしていました。本が一冊もない家でしたが、隣の家のお姉ちゃんが「これを読め」と少女漫画をたくさん持ってきて、さくらももこさんの作品や、吉田秋生先生の「バナナフィッシュ」、吉住渉先生の「ママレード・ボーイ」などにハマりました。「ドラゴンボール」や「スラムダンク」など、男子みんなが好きなものじゃなく「俺は人と違うものを読んでいるぞ」みたいな自意識があったと思います。

当時はバブルの時代で町の電器屋も潤ったようで、母が“お受験ママ”になってしまって。小4から地元のスパルタ塾に通わされ、中学受験をしました。入学式では「本当に男しかいないんだ……」と驚きましたが、サッカー部に入って友達もできて、あっという間に「男子校」に染まりました(笑)。豊山は体育会系の校風が強く、「豊山スピリッツ」なる教えが存在するなど、とにかく規律重視の学校でした。そんな環境下で “男子”に染まっていく自分と、家でこっそり少女漫画を読んでいる自分が乖離していく感覚もありました。

高校時代に、大きな変化が訪れた?

初めて人生に「恋愛要素」が入ってきたんです。高校には外部から入学してくる生徒が半分くらいいました。彼らは地元の共学校出身で、女子の知り合いがいる。それで学校帰りにマクドナルドやカラオケに行き、彼らが連れてきた女子たちと“合コン”のようなことをする日々が始まりました。僕は中学時代、割とクラスの中心にいるタイプだったので、女子にもモテるはずと思い込んでいたのですが……合コンでは緊張して話が弾まず、全然ダメでした。さらに、仲間内では「真面目でつまらないやつ」という評価だった友達がモテている現実を目の当たりにし、男子校の基準と女子人気はまったくの別物であることを痛感しました。それはもう価値観の大転換みたいな経験でしたね(笑)。

それからは、雑誌でデートのイロハを勉強したり、彼女のいる友人にどうやったら片想いが成就するか相談したり。なぜそこまで恋愛に夢中になったのかを考えると、“何者でもない自分”に対する焦りがあったように思います。高校生になると技術や体格の差が広がってきて、サッカーでレギュラーを取れなくなった。勉強も怠けていて、成績はクラスで下から3番目くらい。それで、「恋愛で一発逆転だ!」ってなって。

高校時代の印象深い思い出は、高2の文化祭で実行委員をやったことです。自分たちで企画を考えて、当時の人気グラビアアイドルにも出演してもらい、文化祭動員の過去最高記録を作ったんです。達成感を味わった経験はそれだけかもしれません。

高校時代の清田さん/本人提供
高校時代の清田さん/本人提供

その後、早稲田大に進学されたのですね。

大学までエスカレーターで進学することに抵抗があって外部受験を選択したのですが、まったく勉強してこなかったため、すべて不合格でした。みんなが大学生になる中たった一人で浪人した予備校での1年間は必死に勉強しました。予習復習を徹底し、自習のノルマも毎日細かく設定。このやりかたで成績はめきめき伸びました。

早稲田大に入学し、文学部でフランス語を専攻したらクラスのほとんどが女子だったんです。それまでと正反対の環境になり、少数派の男子として女友達の恋バナを聞くようになった。それが「桃山商事」の始まりでした。

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