算数・数学 学びのヒント

「朋あり遠方より来る、また楽しからずや」 数学を通した出会いを大切に

2023.03.17

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芳沢 光雄
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算数や数学は、公式や解法を暗記し、数字を当てはめて正しく計算できれば、正解にたどり着ける――。短絡的な受験勉強の弊害か、そんな「暗記数学」の迷路に入り込み、分数やパーセント(%)の本質を理解しないまま大学生になる若者がいます。数学者で、小学生から大学生まで幅広く数学の魅力を教えてきた桜美林大学リベラルアーツ学群の芳沢光雄教授が、中学・高校受験期の子どもにこそ理解してほしい算数・数学のツボを解説します。

45年間の大学教員人生に幕

「朋あり遠方より来る、また楽しからずや」

筆者はこの3月で桜美林大教授の定年となり、45年間にわたる大学教員人生の幕を閉じます。振り返ると、冒頭の言葉が胸に響いてきます。

1978年4月、学習院大理学部の数学科助手として、線形代数学演習の授業でスタートを切りました。最初に出会った1年生とは、年齢もせいぜい7歳しか離れていなかったこともあって、仲良くおしゃべりする機会が多くありました。

80年からは慶応義塾大の一般教養に5年間勤めました。そのころ感じたのは「自信を持って生きると実力以上の力を発揮できる」ということです。ラグビー部に所属する学生2人が、期末試験の答案に「日本一を目指します」というメモを残したことがあります。その後、86年1月のラグビー日本選手権で、慶応大はトヨタを破って初の日本一になりました。その試合で大活躍したのが、メモを残した2人だったのです。また、商学部に所属していたある学生の考え方が卓越していたことから「卒業したら思い切って医学部を再受験して医師を目指したらどうか」と提案してみました。彼は現在、医師として大活躍していて、筆者の人生を支えてくれる命の恩人となりました。

85年から15年間勤めた城西大数学科のゼミ卒業生の多くが、数学教員になって活躍しています。北海道南西沖地震のとき奥尻島にいて救援活動で大活躍した教え子もいますし、725人に合わせて1万回以上じゃんけんをさせてデータ解析した際に取りまとめ責任者だった学生は、青森県の教員となって筆者を何度も出前授業に招いてくれています。筆者は著書などで、大学生でも間違える計算問題として、「40 ‒16÷4÷2」という計算式を何度も取り上げています。そのきっかけを与えてくれた栃木県の教員も、教え子です。

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