Think Gender

なぜ女子の理工系進学は少ないのか 横山広美・東大教授に聞く解決策

2023.03.20

author
葉山 梢
Main Image

日本は世界的に見て、理系の女性が少ないことが知られています。そこにはどんな壁があり、どうすれば打破できるのでしょうか。「なぜ理系に女性が少ないのか」の著者で、東京大国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構で副機構長を務める横山広美教授に、原因や解消に必要なことを聞きました。

横山広美

話を聞いた人

横山広美さん

東京大国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構副機構長・教授

よこやま・ひろみ/1975年東京都生まれ。専門は科学技術社会論。科学技術の倫理問題(ELSI)や政策を対象に研究を行う。著書に「なぜ理系に女性が少ないのか」(幻冬舎新書)など。

「自由に進路を選んだ」と思っても

――「なぜ理系に女性が少ないのか」では、理系の女性が少ないことの様々な原因が指摘されています。特に問題だと思われるのは何でしょうか。

三つあります。一つ目は理工系を卒業した後の就職先や仕事内容のイメージが男性的であること。

二つ目は能力差別の問題です。日本の社会には、女性は数学ができないという間違った認識、いわゆる「数学ステレオタイプ」が強く存在しています。しかし、経済協力開発機構(OECD)の学習到達度調査「PISA」によると、日本の15歳の数学の成績は男女ともにトップレベルです。数学の成績は性別によって決まる能力ではなく個人差であると考えられています。

三つ目は、数学ステレオタイプの背景にある社会的なジェンダー差別意識です。多くの人は、理系の勉強ができる人は頭がいい人、と受け止めているようです。一方で日本の社会には、優秀で論理的に議論する人は女性らしくないという古い社会風土があるようです。私たちの研究ではこうした効果が数学の男性イメージに結びついていることを明らかにしました。

私たちは進路を自由に選んだと思いがちですが、実はこうした社会風土によって、選べる選択肢が知らず知らずのうちに狭まっている面があるのです。理工系分野で学ぶ女性を増やすには、社会風土そのものを変える必要があります。

――そもそも、なぜ理工系の女性を増やすべきなのでしょうか。

政府は理工系人材確保のため、企業はイノベーションの機会を増やすために、と考えているかもしれません。こうした時代のニーズに応えることは重要です。一方で大学にいる私は、根本的な問題を整理する機会に恵まれています。理工系学問を学びたい女性は多いはずなのに、その道が社会的に閉ざされている。これはよくない、「機会の平等」を担保することが大事だと考えています。人数が増えるという「結果の平等」はそれについてくるイメージですね。

東大でもこの15年以上、理工系の女子学生に来てほしいと活動してきましたが、なかなか効果が表れていません。なぜなのか。研究の面白さを伝えるだけでは足りていないのです。その理由を研究し、戦略を立てて改革をしていくことは重要だと思います。

講義でこの話をすると、成績は良かったのになんとなく数学や理科ができないと思い込まされてきていて、理系進学は考えたことがなかった、と話す女子学生が一定数います。一方で少数の理系の女子学生の中には、親をはじめ周囲が理系進学にバイアスをもっていなかったと振り返る人がいます。

バックナンバー
新着記事
新着一覧
新着一覧

ページトップ