Think Gender

“最も遠い存在!?”女子大生と男子校生が「他者理解」を考える 昭和女子大×駒場東邦中のプロジェクト

2023.03.30

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市川 理香
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昭和女子大の女子学生と、駒場東邦中学校の男子生徒という“最も接点のない遠い存在”。その両者が、対話をし、異なる価値観を持つ他者を理解するとはどういうことかを考える3年間のプロジェクトに取り組みました。(写真は昭和女子大提供、文中学年は2023年3月現在)

遠い存在に向けて伝える努力

2023年2月、駒場東邦中学校(東京都世田谷区)の3年生240人が、昭和女子大(同区)を訪れた。中学1年生の時から取り組んできた共同企画の特別授業のためである。3年前に始まったプロジェクトで、1年目と2年目はコロナ禍の中でオンライン開催となり、今回、初めて対面での実施となった。

“最も接点のない遠い存在”同士の出会いは、20年1月に昭和女子大で行われた、エッセイスト小島慶子さんの講演、「『女子アナ』は女性の成功か」(昭和女子大現代ビジネス研究所主催)にさかのぼる。駒場東邦の中学生3人が、この講演会に来場したことだった。主催したグローバルビジネス学部会計ファイナンス学科の小森亜紀子准教授は「女子大学の講演会に男子中学生が来る!」と驚いたが、講演内容を素直に受け止めた感想を読んで、「女子大学生と男子中学生とで、何か一緒にできるのでは?」と思ったと振り返る。

昭和女子大では、1年生と2年生が、ダイバーシティーとジェンダーを学んでおり、学生は授業後の感想として「男性も講義を受けてほしい」と書いてくる。どうしたら男性にリーチできるのかと考えていたところだった。中学生にとっても、親やそれ以上の世代の大人から聞くよりも、学生から話を聞いた方がよく理解してくれるのではないかということから、「女子大学生と男子中学生が一緒に考えるプロジェクト」がスタートした。

ディズニーから炎上CMまで

21年は、スクリーン越しに女子学生がファシリテーターを務めての特別授業。「ディズニープリンセス」の変遷をたどりながら、「プリンセスらしさとは?」と問いかけた。この年の二つ目のワークショップのテーマは「自分がファーストジェントルマンになったら、仕事を続けるか、自分は仕事を辞めて妻を支えるか」。大学生に質問されて考えるうちに中学生は、プリンセスといえば王子様が来るのをじっと待つ人というイメージを抱いていたり、保育士は若い女性の職業と決めつけていたり、自分の無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)に気づいていった。

2年目も、中学2年生になった駒東生に昭和女子大の学生が質問を投げかけながら進行。この年は多様性に注目し、ワンオペではないかと炎上した赤ちゃん用おむつのCMや、25歳が女性の一生でことさらに強調される化粧品のCMに対する社会の反応から、家族や父親、母親の役割分担などにも注目し、固定概念も変化してきたことを学んだ。また、ユニバーサルデザインの街並みや生活用品を元に、インクルーシブな社会について考えたのも、この年だ。年に一度の特別授業だが、中学生の口から自然に「無意識のバイアス」というワードが出るようになり、自分たちより上の世代とのギャップも気付くようになっていたという。

3年目は、グローバルビジネス学部、人間社会学部1〜4年生22人と、駒場東邦中学校3年生の欠席者を除く240人が昭和女子大学で一堂に会した。集大成のテーマは「男女別学」「男女の仕事・役職」について。女子学生は在籍学部も様々で、3年続けて関わった学生だけでなく今年初めてという学生もいて、プロジェクトが大学の中で関心の高いものだったことをうかがわせた。

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