学習と健康・成長
食後30分間は歯磨きNG? ジュースは歯を溶かす? 歯科医が教える本当とうそ
2023.04.24

「ジュースを飲むと、歯が溶ける」「食後30分は、歯磨きを控えるべき」など子育て中、たびたび耳にする歯にまつわるうわさ。その真偽がわからず、悩む保護者も多いのではないでしょうか。歯にまつわるうわさの真偽について、日本歯科医師会常務理事で歯科医師の小山茂幸さんに聞きました。
(こやま・しげゆき)1985年、広島大学歯学部を卒業。1991年、山口県周南市に「こやま歯科医院」を開業。2015年から山口県歯科医師会会長、山口県高等歯科衛生士学院学院長。2016年から日本歯科医師会常務理事も務める。
ジュースを飲むと、歯が溶ける?
――「ジュース類を飲むと、歯が溶ける」という説を耳にしたことがあります。これは本当でしょうか。
ジュース類を飲むと歯が溶けるわけではなく、口内のpHが酸性に傾く時間が長いと、歯が溶けるというのが正確です。
pHというのは、液体が酸性かアルカリ性かを示す数値です。pHの値が大きいとアルカリ性、値が小さいと酸性が強くなります。例えばpH1は塩酸や硫酸で、ものを溶かす性質を持っています。
ジュース類のほとんどが酸性であり、コーラはpH2.2、スポーツ飲料はpH3.8くらいとされています。数値で見ると、ものを溶かす性質を持っています。

口内は平常時、pH7の中性に保たれています。ジュース類自体が持つ酸や、むし歯菌が飲食物に含まれる糖を分解して作り出す酸によって、口内のpHが低くなります。そうすると、歯の表面のエナメル質からリンやカルシウムが溶け出します。この現象を「脱灰」と呼びます。
その後、唾液が食後30分~1時間かけて口内のpHの値を中性に戻していきます。そうすると、溶けだしたリンやカルシウムが歯に戻ります。これを「再石灰化」と呼びます。
この2つのバランスが口内では保たれています。ですから、ジュース類を飲んで、口内のpHが酸性に傾く「脱灰」の時間が長いと、むし歯になるのです。
――ジュース類のpHではなく、口内のpHが重要なのですね。
はい。一番よくないのは、だらだら飲んだり、食べたりすることです。チョコレートや飴をだらだらと食べ続けていると、口内のpHが酸性優位な環境となり、むし歯になりやすくなります。