大学入試のゆくえ

大学定員厳格化の緩和で追加合格者が激減 「犠牲者は受験生」の声も

2023.05.02

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中村 正史
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文部科学省が進めてきた大学の定員厳格化が2023年度入試で緩和されたことで、私立大学の追加合格者が激減していることがわかった。学生が都市部の大学に集中することを避ける目的で始まった施策だが、その効果が不透明ななか、短期間での厳格化と緩和に受験生も大学側も振り回されている。(写真は、定員管理の変更を通知した2022年11月の文部科学省の文書)

追加合格者が昨年から半減した東洋大

東洋大学の2023年度の一般選抜(2部除く)での追加合格者は1370人で、22年度の2957人の半分以下になった。21年度は5733人で、「この3年は年を追って半分、半分になっていた」と加藤建二入試部長(理事)は話す。

追加合格者数がピークだったのは、20年度の6664人。同年の一般選抜の合格者数は約2万6000人なので、26%程度が追加合格だった計算になる。一方、23年度の合格者数は約2万8000人で、追加合格者の割合は5%程度まで激減している。

追加合格の発表の仕方は、①最初の合格発表時に補欠合格(繰り上げ合格候補)を発表しておき、合格者の入学手続き状況(歩留まり)を見て繰り上げ合格を出す、②補欠合格は出さず、歩留まりの状況を見て追加合格を出す、の2つがある。

東洋大学の追加合格は①の方法で、一般選抜前期の入学手続きを2月末で締め切った後、1回目の追加合格を3月初め、2回目を3月中旬、3回目を3月下旬に出している。

追加合格が激減した背景にあるのは、文科省の定員厳格化と緩和である。以前は入学定員の1.3倍を超えないことが基準とされていた時期もあったが、学生が都市部の大学に集中することを避けるため、文科省が16年度から定員管理を厳しくし、学生数8000人以上の大規模大学の場合、国の補助金が不交付になる基準を当時の1.2倍から徐々に下げ、18年度からは1.1倍となった。学部ごとに単年度の入学定員超過率が対象のため、1学部でも超過すると補助金カットの対象になる厳しい内容だ。学部の新設を認めない基準も設けられた。

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