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理科は暗記科目じゃない! 自宅でできる実験で面白さ感じて 中学入試問題も解きやすく
2023.05.17

中学入試の理科では、実験を題材にした問題が頻出です。その実験を実際に経験し、さまざまな科学現象の本質に触れていると、解きやすくなります。自宅でできる実験について紹介する本が出版されました。
自宅でできる20の実験を紹介
2022年に出版された「科学実験でスラスラわかる!本当はおもしろい中学入試の理科」(大和書房)。著者は長年、筑波大学で中学・高校生向けの科学教育プログラム「GFEST」に携わってきたサイエンスコーディネーター、尾嶋好美さんです。
160ページで、自宅でできる20の実験をカラフルな写真とともに紹介。体裁は一見、料理のレシピ本のようです。それぞれの実験に関連する中学入試の過去問と解説が掲載されています。
例えば、「ペンの色を分解して、混ざったものを分ける方法を知ろう」という項目では、黒色のサインペンの水性インクを分解していきます。黒色のインクには実は、様々な色素がまざっており、コーヒーフィルターと水をうまく使うと、ピンク色や水色などに分けられます。「クロマトグラフィー」と呼ぶ化学の分析法の一つです。
実験に続くページでは、開成中(東京都)で出題された関連問題が紹介されています。クロマトグラフィーのポイントは、「水への溶けやすさ」や「紙へのくっつきやすさ」などの性質の違いを利用して、複数の物質に分けることができる、という点。実験を通して本質をつかんでおけば、どんな形で出題されても対応できることが示されています。

「気圧」の差を実感する
また、「空気がうすい世界ではどんなことが起きるかを考えよう」という項目では、気圧について考えます。日々の生活で気圧を意識することはあまりないかもしれませんが、飛行機に乗ったり高い山に登ったりすると、変化を感じられます。聖光学院中(神奈川県)ではかつて、富士山頂でご飯を炊く方法を考える問題が出題されました。標高が高いと気圧が低く、水分子をおさえつける力が小さいため、100度より低い温度で水が沸騰します。しかし、ご飯を上手に炊くには最低97度が必要なため、普通に鍋でご飯を炊くと、お米がかたくなってしまいます。そこで「ご飯を炊く鍋のふたの上に重い石をのせ、水分子をおさえつける力を大きくする」などが正解になります。
一度「気圧」の意味を実感しておくと解きやすい問題ですが、そのためにこの本が勧めるのが、食べ物を長期間保てる真空保存容器と、小さな袋に入ったお菓子の活用です。お菓子の袋を真空状態に置くと、気圧の差によってふくらみます。
空気中では、「袋の中の気体分子が外に押す力」と「外の気体が袋を押す力」が釣り合っていますが、外の気体がないと袋を押す力はなくなり、袋がふくらみます。この理由を知ることで、自宅で気軽に気圧の効果を実感できる、というわけです。
