学習と健康・成長

ずるずる認めてはだめ 子どもをオンラインゲーム依存にさせないための専門家のアドバイス

2023.05.18

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阿部 花恵
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別々の場所にいても、さまざまな人と一緒にプレイできるオンラインゲーム。ゲームを通じて、友人づくりや気分転換ができる楽しさに、多くの大人や子どもが夢中になっています。一方、対人トラブルや過剰な課金、長時間プレイによる健康面の影響などの懸念もあります。インターネット依存・ゲーム依存の専門医療を日本で初めて開始した久里浜医療センター精神科の松﨑尊信さんに、子どもがネットゲーム依存にならないために、保護者ができることを聞きました。

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話を聞いた人

松﨑 尊信さん

国立病院機構久里浜医療センター精神科診療部長

(まつざき・たかのぶ)医学博士、精神保健指定医。2011年日本で初めてインターネット依存・ゲーム依存の専門医療を開始した久里浜医療センターで、アルコール依存症のほか、子どものオンラインゲーム依存の相談や治療にも対応している。

オンラインゲームの多様な現状と熱中する理由を大人は知らない

――我が子がオンラインゲームをしている場合、保護者としてまずどんな姿勢で向き合うべきでしょうか。

最初に知っていただきたいのは、ゲームそれ自体は悪ではないこと。そして、いまの親世代が子どもだった頃と比べると、ゲームは飛躍的に進化・多様化していることです。

例えば、Nintendo Switchの「スプラトゥーン」や、マルチデバイスで遊べるオンラインゲームの「フォートナイト」というタイトルをご存じでしょうか。どちらもTPS(三人称視点のシューティングゲーム)というジャンルのゲームですが、ゲームの世界観がしっかりしており、オンラインでたくさんの人と繋がりながら没入感とスリルが味わえることから、小中学生にも人気のタイトルです。

ほかにも、複数プレーヤー同時参加型のオンラインRPGであるMMORPG、戦況がリアルタイムで変化するRTSなど、さまざまなジャンルのオンラインゲームがあります。小学生でもゲームに詳しい子であれば、それぞれの特性を理解しながら楽しんでいます。

一方で、大半の保護者はそうしたオンラインゲームの世界を知りません。知らないからこそ、子どもが熱中する理由がわからない。そうした世代間ギャップが子どもと大人の間にあることを、大人側がまず理解するべきだ、と私は思います。

ゲームが日常を侵食する前にルールを決める

――多様で魅力あふれるオンラインゲームだからこそ、リスクや依存度の高さが心配になります。

そこは本当に難しい問題です。内閣府が毎年実施している「青少年のインターネット利用環境実態調査」を見ると、10歳からスマートフォン(スマホ)の利用率が急増します。つまり、小学4年生くらいから自分のスマホを持つ子が増えてくるのです。このスマホ使用の若年化は年々進んでいます。

オンラインゲーム_1
:「令和元年度青少年のインターネット利用環境実態調査」(内閣府) (https://www8.cao.go.jp/youth/kankyou/internet_torikumi/tyousa/r01/net-jittai/pdf/sokuhou.pdf)

スマホはインターネット(ネット)とつながるデバイスですから、オンラインゲームにも当然繋がりやすくなります。スマホの無料ゲームをきっかけに、オンラインゲームにハマる子も増えています。こうした背景から、保護者がまずすべきことはスマホを子どもに使わせる前に、ルールをしっかり決めておくことです。家族で話し合って、フィルタリングや制限時間などを設定していきましょう。

――ルールの設定において、意識しておくべきことはありますか?

オンラインゲームのリスクという点で考えると、自室にスマホやタブレットなどの電子機器を持ち込むことはあまりおすすめできません。

親の目が届かない空間でまったく知らない人と繋がれる状態だと、予期せぬトラブルを招きやすいんですね。スマホを使用するのであれば、リビングのような共有空間が安全だと思います。

SNSとの付き合い方もこれと同じです。大人も経験があると思いますが、「LINEの返事をしなきゃ」と焦って、いつまでもスマホが気になって手放せない状態が続くと、睡眠時間も削られますし、スマホへの依存性も高まります。

そうならないために、例えば「21時にはスマホをリビングに置いて夜間は使わない」というルールを子どもと共有しておく。子ども側も「家族と約束していて、21時以降はスマホが使えないから、返事ができないんだ」と友達にあらかじめ伝えておけば、無用なトラブルも避けられるでしょう。スマホは便利であるがゆえに、適度な距離のとり方を親子で工夫するべきです。

――話し合って決めたルールを守れなかった子には、どう接すればよいでしょうか?

現実には、決めたルールを素直に守る子どもの方が少数派かもしれません。思春期であれば一度決めたルールを巡って、反抗的な態度を取ることもあるでしょう。アイデンティティーを育む大切な時期ですから、それが普通といえば普通だと思います。

このとき、大切なのは「じゃあ仕方ないな」と大人側がずるずると認めてしまわないこと。ゲームに日常が侵食されればされるほど、他のことに割く時間は削られます。学生時代であれば、ゲーム以外にしたいこと、すべきことも当然あるはずです。

そのような点を子どもにしっかり伝えた上で、衝突を繰り返してでも、どうすれば適切な使い方ができるかを根気強く話し合ってみてください。そうした地道な日常のコミュニケーションの積み重ねが、信頼関係を育み、子どものゲーム依存を防ぐ手立てにもなるはずです。

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