一色清の「このニュースって何?」

「核軍縮に関する広島ビジョン」発表 → 核兵器は持ってもいいの?

2023.05.26

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一色 清
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日々のニュースの中に「学び」のきっかけがあります。新聞を読みながら、テレビを見ながら、食卓やリビングでどう話しかけたら、わが子の知的好奇心にスイッチが入るでしょうか。ジャーナリストの一色清さんが毎週、保護者にヒントを教えます。(写真は、平和記念公園の慰霊碑へ向かう〈左から〉湯崎英彦広島県知事、スナク英首相、欧州連合〈EU〉のフォンデアライエン欧州委員長、トルドー加首相、メローニ伊首相、バイデン米大統領、EUのミシェル首脳会議常任議長、岸田文雄首相、マクロン仏大統領、ショルツ独首相=5月19日、広島市中区、上田幸一撮影)

条約で認められた5つの核保有国

被爆地広島で開かれた主要7カ国首脳会議(G7サミット)は、核兵器の恐ろしさや平和の大切さが印象づけられるイベントになりました。首脳たちは、広島平和記念資料館を訪れ、平和記念公園の慰霊碑に献花をしました。そして、「核軍縮に関する広島ビジョン」が発表されました。世界の平和に向けて一歩前進するサミットになったと前向きに受け止める声がある一方、広島ビジョンでは「核兵器で抑止する政策」の重要性をうたったり、「核兵器のない世界」への具体的な道のりを示せていなかったりすることから、「これでは何も変わらないだろう」という声も聞かれます。

そもそも7カ国のうちアメリカ、イギリス、フランスの3カ国は核兵器保有国です。そうした国のトップに「核兵器のない世界を目指す」と言われても、核兵器を持っていない国の人にはむなしさを感じるところがあります。世界には、核兵器を持っている国と持っていない国とがあります。その線引きはどこにあるのでしょうか。

核兵器が生まれたのは、第2次世界大戦中です。ウランやプルトニウムといった元素が核分裂を起こすと大きなエネルギーを出すことがわかり、それを利用した爆弾を作る研究がアメリカ、ソ連(現在のロシアなど)、イギリス、ドイツ、日本などでおこなわれていました。最初にその実験を成功させたのがアメリカでした。アメリカは1945年8月6日に広島に、8月9日に長崎に原爆を投下しました。未曽有の被害を目の当たりにした日本は無条件降伏を受け入れ、第2次世界大戦は終わりました。

アメリカに続いて核実験を成功させたのは、アメリカとの冷戦が始まっていたソ連でした。49年、原子爆弾の実験に成功し、世界で2番目の核兵器保有国になりました。核兵器の独占が崩れたことを知ったアメリカは危機感を持ち、原爆より破壊力がはるかに大きい水素爆弾の開発を進めることを決めました。

3番目に核実験を成功させたのはイギリスでした。朝鮮戦争により東西の緊張が高まっていた52年、アメリカの援助を受けて核実験を成功させました。イギリスは第3の核保有国となりました。

4番目としてフランスも続きました。60年に核実験を成功させました。ド・ゴール大統領は米英ソに対抗した独自外交を展開するため、力の背景となる核兵器を求めたとされています。

5番目は中国でした。64年に西域の新疆ウイグル自治区で核実験をおこない、成功させました。

こうして次々と核保有国が増えることについては、危機感を持つ人が増えました。このままでは、多くの国が核兵器を持つようになり、戦争で使われるリスクが高まり、人類存続が危うくなるのではないかという危機感です。国連では核保有国をこれ以上増やさない条約が必要だということになり、70年に発効したのが核不拡散条約(NPT)です。この条約は、この時点ですでに核兵器を持っている国の保有は認めるが、それ以外の国の保有は認めないというものです。つまり、アメリカ、ソ連、イギリス、フランス、中国の5カ国については認めることにしたのです。この5カ国はいずれも国連の安全保障理事会の常任理事国でした。第2次世界大戦の戦勝国には認めたという結果になりました。NPTの締約国は現在、191カ国・地域になっています。

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