学習と健康・成長

楽器を習っていなくても大丈夫!? 音楽科が苦手な子どもへの専門家からのアドバイス

2023.06.01

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波多野友子
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「楽譜が読めない」「演奏や歌唱がうまくできない」などの理由で、音楽科の授業に苦手意識を抱える子どもは少なくありません。そうした苦手意識を持っている子どものために、保護者ができることはあるのでしょうか? 東京学芸大こども未来研究所・教育支援フェローの原口直さんに聞きました。

Nao_Haraguchi

話を聞いた人

原口直さん

東京学芸大こども未来研究所 教育支援フェロー

(はらぐち・なお)東京学芸大学教育学部卒業後、大手芸能プロダクショングループ、音楽科教諭を経て、東京学芸大こども未来研究所教育支援フェロー。会社員時代の経験を活かした知的財産権教育の研究・発表実績多数。2020年春より、教室からYouTube動画・ウェブサイト・講演にフィールドを移し、教員や教育実習生が学ぶためのコンテンツを発信している。Google認定教育者。

音楽科の授業に「予習」や「先取り」はあまり重要ではない

――普段から音楽は好きでよく聴いていても、音楽科の授業は苦手な子どもがいると聞きます。原口さんの実感としてはいかがですか?

「経験者に比べて、楽器がうまく弾けない」「楽譜が読めない」「歌うのが苦手」などの理由から、成績が期待できないと思い込み、音楽科の授業が嫌いになってしまったという声は実際に保護者から相談されたことがあります。小学校高学年になるにつれて、授業中の失敗経験や声変わり、できる子との比較による劣等感なども関わってきます。

しかし、これらの理由から音楽科の成績が下がってしまうかといえば、必ずしも当てはまらないと思います。なぜなら、音楽科の授業は国語や算数のように、授業内容の予習や先取りをする重要性があまり高くないからです。

――ピアノなどの習い事をしていることが、必ずしも有利とはならないのでしょうか。

はい。例えば2020年度以降の学習指導要領には、和楽器においては「口唱歌(くちしょうが)」を導入するよう定められています。口唱歌とは、楽器の旋律を「ド・レ・ミ」のように楽譜に沿った読み方をするのではなく、「ドン・ドコ・ドン」といった旋律や奏法をくちずさむ歌唱法です。つまり、ト音記号の楽譜が読めない=知識を先取りしていないせいで授業について来られない、ということにはなりません。

また、最近の音楽科の授業で取り扱われる楽曲では、保護者が子どもの頃に多かった西洋のクラシック音楽の比重がかなり減って、日本や郷土の伝統音楽そして諸外国の様々な音楽があります。そのため、ピアノやバイオリンなどの習い事で習得してきたクラシックの技術や知識が、授業でそのまま生かせなくなってきたと言えます。

こうしたことを理解しておけば、習い事をしている子と比較して、劣等感を抱えることが少なくなるでしょう。

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