身近になるサイエンス
植物の「のどの渇き」を察して顔絵で表示 最新プランターでわかる栽培技術の進化
2023.06.09

「コロナ禍の巣ごもりをきっかけに観葉植物に関心をもつ人が増えている」。そんなニュースを見たことがある方も多いのではないでしょうか。植物に癒やしを求める人の気持ち、わかる気がします。一方で、植物を育てる上で面倒なのが、水やり。やらなきゃいけないとわかってはいても、どうしても忘れてしまうことの一つでしょう。本日紹介するのは、植物の栽培に関するサイエンスです。植物の育て方について、一昔前との変化を楽しみながらお読みください。
植物の気持ちがわかるプランター
中国のメーカーPlantsIO(プランツィオ)が、テクノロジーを用いたあるプランターを発表しました。最近は、自動で水をやる商品なども登場していますが、それとはまた違う、ユニークなプランターです。プランターにディスプレーをつけ、あるものを表示しました。
正解は、植物の状態を表した顔です。まるで植物自体が感情をもったかのように表情が変化します。朝にカーテンをあけ日光を浴びたときには目を覚ましたような表情。部屋が寒いときには凍えたような表情。その数なんと70種類以上もあります。
水やりを忘れてしまう理由の一つとして、タイミングがわからないという人も多いでしょう。このプランターを使えば、のどがかわいた表情がヒントになります。うっかり忘れてしまうことも、減るかもしれません。ペットを育てるような感覚で、植物を育てることができるのです。
このプランターには、水位・土壌水分・タッチ・振動・空気湿度・光・温度の七つのセンサーが搭載されています。日光を浴びたときにうれしい顔になるのは、「光センサー」のおかげです。「タッチセンサー」がついているのもユニークなところ。プランターをなでると、センサーが反応して、植物が喜ぶ顔が映し出されます。
七つのセンサーの中でも、「土壌水分センサー」は聞き慣れない方も多いかもしれません。これは、土壌に含まれる水分量を測定することができるセンサーで、土が乾いたタイミングを正しく知ることができます。植物の栽培において、IoT化が進んでいることがおわかりいただけると思います。

鉢の外側で植物が育つ 最新の水耕栽培
近年登場した最新プランターはこれだけではありません。電池を使わなくても水やりの労力を減らせるプランターがあるのです。その名は「terraplanter(テラプランター)」。土がいらないプランターで、家の中で育てても汚れが気になりません。
形は円柱形で、模様のある素焼きの鉢のような見た目をしています。特徴的なのが、植物を育てるのが鉢の内側ではなく、外側だということ。「外側でどうやって植物を育てるの」と不思議に思うかもしれませんが、プランターの表面がでこぼこしているため、植物の種や根を固定させれば、鉢の外側で植物が育っていく仕組みです。
さらにユニークなのが、水やりの方法。土を用いた一般的な栽培では、じょうろで土に直接水をかけます。しかしこのプランターには土がありません。では、どのように行うのでしょうか。
水やりのポイントは、プランター表面の素材にあります。特殊なセラミックでできており、顕微鏡で見ると細かい隙間が開いています。プランターの中には水をためられる空洞があるのですが、この構造のおかげで内部にためた水がじわじわ外に染み出るようになっています。染み出た水を外側の植物が少しずつ吸収するので、植物が必要なときに必要な量だけ水を与えることができます。結果的に、水やりの頻度も下げることができる優れものなのです。
ここまで読んで、「土がなくても植物が育つ」ことを不思議に思う方もいるかもしれません。小学校の理科で学ぶ通り、植物は「水」「光」「空気」「温度」「肥料」があれば、成長します。そのため、土があってもなくても、上記の五つの条件を満たすことができれば植物を育てることができます。ちなみに、土を使わずに容器の中で植物を育てる方法を「水耕栽培」といいます。最近はLEDライトと水耕栽培を組み合わせた家庭菜園キットも登場しつつあるので、もし興味がある方がいたら調べてみてください。
