大学「年内入試」 課題と希望
なぜ大学入試が年内で終わる高校生が増えたのか 教育研究者に聞く①佐賀大学・西郡大教授
2023.06.07

高校3年生の秋に出願して12月までに進学先が決まる「年内入試」が広がっています。かつてはAO入試・推薦入試と呼ばれた総合型選抜・学校推薦型選抜を指していう言葉で、大学への志望理由書、高校時代の成績をまとめた調査書、試験会場での面接、それに大学によっては筆記試験(主に小論文)や英語民間試験の結果をまとめて大学側が合否を判断する選抜方式です。私立大では一般選抜(一般入試)の入学者が2000年の60.1%から22年は41.1%に減った一方、学校推薦型選抜は37.2%から41.1%に、総合型選抜は1.7%から15.2%に増えました。国公立大でも総合型・学校推薦型選抜による入学者数は年々増え続けています。難関大学の選抜に一般選抜と並行して準備を進め、合格を目指す生徒もたくさんいる一方で、定員割れしている大学では学生確保の手段として、学力をまったく問わない総合型選抜、希望者全員受け入れの指定校推薦を行っているという厳しい現実もあります。「年内入試」は今後どのような展開になっていくのか、教育研究者に話を聞きました。1回目は、佐賀大学副学長(入試担当)で、教育情報学が専門の西郡大教授です。
(にしごおり・だい)東北大学大学院教育情報学教育部博士課程修了。博士(教育情報学)。2009年、佐賀大学アドミッションセンター准教授、16年教授。17年からアドミッションセンター長。高大接続における入試制度設計などの研究に取り組む。
年内入試の増加は自然な流れ
――総合型選抜・学校推薦型選抜の現状をどのように見ますか。
今の動きは時代の流れに沿っていると私は考えています。ポイントは二つですが、ここにきて三つめのポイントが加わっています。
① 大学教育のあり方が変化している
教育のあり方が変化すれば、学生の選び方も変わってきます。具体的には、様々な大学が生き残りをかけて新学部を作ったり、カリキュラムを新しくしたりしています。昔は大教室にたくさんの学生を入れて一斉講義する方式が中心で、学力的なばらつきが小さい方がやりやすかったといえます。しかし今は教育改革によってフィールドワークやインターンシップを多く取り入れた教育活動、課題解決型の学習など様々な学びの場があり、基礎学力を踏まえながらも教育カリキュラムに合致した学生をとっていきたいというニーズがあります。総合型・学校推薦型といった形で、ターゲットとなる受験者層を定め、選考手続きや評価方法を工夫しやすい制度に展開していくのは時代の流れとして理解できます。