一色清の「このニュースって何?」

物流の「2024年問題」で政府が対策 → トラックドライバーはなぜ不足?

2023.06.09

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一色 清
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日々のニュースの中に「学び」のきっかけがあります。新聞を読みながら、テレビを見ながら、食卓やリビングでどう話しかけたら、わが子の知的好奇心にスイッチが入るでしょうか。ジャーナリストの一色清さんが毎週、保護者にヒントを教えます。(写真は、ドライバー不足の対策として期待される、2台分の荷物が運べるダブル連結トラック=滋賀県彦根市)

コロナで荷動きが活発 なり手不足の問題も

最近、物流の「2024年問題」という言葉をよく聞きます。2024年というと来年ですが、何が起こるというのでしょうか。

トラックドライバーが足りなくなって、モノが届くのに時間がかかったり、送料が高くなったりしそうなのです。トラックドライバーの働きすぎを防ぐ新しいルールが24年4月から始まるためです。新ルールは、ドライバーの年間拘束時間を原則3300時間までとします。この上限時間は今より216時間少なくなります。残業は年間960時間までに限られます。仮に毎日働いても1日あたり9時間、残業2時間以上という計算になり、これでも十分に長いのですが、今はもっと長い時間働いているということです。

一方、荷動きは活発になる傾向にあります。ネット通販は年々広がっていますし、コンビニや工場などはきめ細かい配送を求めています。コロナ禍から明けて全体の経済活動が盛んになっているという事情もあります。

荷物が増えるのにドライバーの働く時間が短くなれば、輸送能力が不足することになります。何の対策も取らないと、24年度には今の輸送能力の14.3%が不足するとみられています。そうなると、届くのに時間がかかるようになったり、送料が上がったりするのは必至です。

2024年問題が起きるのは、そもそもトラックドライバーのなり手が少ないためです。トラックドライバーは全体の平均より年間の労働時間が約2割長く、所得は約1割低いという現状があります。きついのに所得が低ければ、なろうとする人が少なくなるのは当然の成り行きです。そうなれば、仕事はますますきつくなり、なり手がますますいなくなります。その悪循環により、業界では高齢化が進んでいます。トラックドライバーの平均年齢は40歳代後半で、全産業平均よりかなり高くなっています。

若い人には、トラックドライバーという仕事自体が将来なくなるのではないかという不安もあるといわれます。自動車を自動で運転する技術の研究開発が進んでいます。いつになるかはまだわかりませんが、自動車は最終的には無人運転になるといわれています。すでに日本でも高速道路でトラックの無人運転の実験がおこなわれています。無人運転の始まりは、長距離を運転するトラックドライバーという職業がなくなっていくことにつながりそうです。

人手不足の分野では、外国人、女性、高齢者の活用が検討されることがよくあります。しかし、こうした人たちをトラックドライバーとして活用するにはハードルがあります。外国人の場合は日本語ができなければ、大型免許をとることはむずかしく、標識や看板を読みとることもむずかしいでしょう。また、女性のトラックドライバーは現在約3%程度しかおらず、増加が期待されるところですが、荷物の積み下ろしや長時間運転など体力が必要な仕事であるため、大きく増えることは期待しにくいところです。高齢者も体力的な問題があります。

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