北海道むかわ町穂別で見つかった、全長8メートル以上の恐竜「むかわ竜」(通称)。大きさや体の骨の8割以上が発掘されたという規模から、「日本一の恐竜化石」と呼ばれます。約7200万年前の地層から発見された実物化石と全身復元骨格標本(レプリカ)が、地元むかわ町以外で初めて、7月13日から東京・上野の国立科学博物館で開かれる「恐竜博2019」で公開されます。ひと足先に「むかわ竜」の世界をどうぞ。

 「むかわ竜」はハドロサウルス科の恐竜だ。4本の脚で平地を歩き回りながらたくさんの植物を食べ、大きな群れをつくって生活していたと考えられている。

 化石は約7200万年前(白亜紀後期)の地層に眠っていた。尾の骨の一部が見つかった後、全身の骨格が発掘された。骨は部位が特定できたものだけでも222個あり、全体のボリュームの約8割にのぼる。

 陸にいた恐竜の化石は、川や湖などに堆積(たいせき)した地層から見つかることが多く、大半の骨がそろって、海底だった地層から見つかることは珍しい。海に流された個体がバラバラになる前に化石となり、後の地殻変動で、そこが山の中になったというわけだ。

 全身の復元骨格(レプリカ)を作る際、ほとんどの骨は実物化石で型を取ることができた。近縁の恐竜を参考にしたのは、顔の鼻先や腰の位置にある仙骨、尾の先端部という限られた部分だった。研究の中心を担った北海道大総合博物館教授の小林快次さん(47)は「ほぼ発掘された骨だけで全身骨格ができあがったパーフェクト恐竜だ」と語る。

 国立科学博物館標本資料センターのコレクションディレクターで、「恐竜博2019」を監修する真鍋真さん(59)は、化石と復元骨格を一緒に見てもらいながら、「むかわ竜」の生きた姿を実感できる空間にしたいと意気込む。「恐竜の良い骨格標本が、海だった地層から見つかることはないという常識を覆す発見だった。世界的にも注目されている」と話す。

 ■「ワニかと思い」

 最初にこの化石の尾の一部を発見したのは、むかわ町に住む化石収集家の堀田良幸さん(69)だ。2003年春、山を歩いていて骨の断面がのぞく岩を見つけた。「ワニかな」と思いながら、むかわ町穂別博物館(当時は穂別町立博物館)に連絡、寄贈した。

 町内に広がる中生代の海の地層からは、海にいた爬虫(はちゅう)類である首長竜のホベツアラキリュウが見つかっていた。学芸員だった現館長の桜井和彦さん(52)は「首長竜かな」と考え、まずは標本の収蔵庫へ保管した。

 7年後、同館を訪れた東京学芸大准教授の佐藤たまきさん(47)に、桜井さんはこの化石を見てもらった。国内の代表的首長竜、フタバスズキリュウを研究していた佐藤さんは、クリーニング(骨の周りの岩石を取り除く作業)が十分でない状態だったが、「珍しい首長竜かもしれない」と感じ、「クリーニングを進めてください」と頼んだ。

 だが、翌年、再び化石を見た佐藤さんは違う直感を抱いた。自らクリーニングして識別するポイントを確認、桜井さんに告げた。「恐竜の骨のようだ」

 桜井さんは、恐竜の専門家である北大の小林さんに写真を添えて意見を求めた。小林さんは一目で恐竜と判断。発見現場に行って続きの骨が埋まっていることも確認した。

 町は13~14年に本格的な発掘調査を進め、頭骨を含んだ全身骨格の発見につながった。「尾の一部しかなかったのにみんなで掘ったら全身が出てきた。誰よりもびっくりしている」と第一発見者の堀田さんは感慨深げだ。

 町は化石を町の活性化に生かす構想を掲げ、町民主体の組織が活動している。復元骨格の作製も多くの町民が関わる形で進められた。(米山正寛)

 ■来月13日から、東京・上野で

 ◇7月13日[土]~10月14日[月][祝]、東京・上野の国立科学博物館。午前9時~午後5時([金][土]は午後8時まで。8月11日[日][祝]~15日[木]、18日[日]は午後6時まで)。入場は閉館の30分前まで。休館日は7月16日[火]、9月2日[月]、9日[月]、17日[火]、24日[火]、30日[月]

 ◇一般・大学生1600円(前売り1400円)、小・中・高校生600円(同500円)など。未就学児無料。チケット情報や詳細は公式サイト(https://dino2019.jp/)またはハローダイヤル(03・5777・8600)

<主催> 国立科学博物館、NHK、NHKプロモーション、朝日新聞社

<協賛> JR東日本、大日本印刷、トヨタ自動車

<展示協力> 大日本印刷、DNPアートコミュニケーションズ

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