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 小説や漫画、ゲームなどで幅広い世代を魅了し続けている中国の「三国志」。出土品が少なく、「伝説」と言われてきた部分の多い三国志の時代について、ここ10年、考古学的発見が相次いだ。その最新成果とえりすぐりの文物によって、リアルな史実に迫る特別展「三国志」が、東京・上野の東京国立博物館で9日に開幕する。主な見どころ、文物を紹介する。

 ■混沌の時代、伝えるれんが

 曹操や劉備、諸葛亮たち「三国志」の英雄は、2世紀から3世紀に実在した人物だ。それは、正史「三国志」(陳寿著)などでノンフィクションの形でつづられた。その後、何人もの武将の栄枯盛衰は口伝えで広まり、脚色が加わって伝説化していった。関羽のように尊敬を集め神格化される武将もいた。

 明の時代(14~17世紀)には、小説「三国志演義」に結実。江戸時代には日本にも輸入され、翻訳された。展覧会は関帝廟(びょう)壁画に描かれた「演義」の名場面や、明時代の関羽像を展示。今に至るまで育まれた「三国志文化」を紹介するところから始まる。

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 伝説を生んだ歴史の始まりは、今から1800年余りをさかのぼる。後漢王朝は、外戚や宦官(かんがん)が実権を握るなかで徐々に力を失い、社会は混乱をきたすようになった。その中で原始道教の太平道や五斗米道が民衆の心をとらえる。太平道は黄色いずきんを目印に、「黄巾の乱」と呼ばれる反乱を引き起こした。安徽省亳州(はくしゅう)市の墓から見つかった磚(せん)と呼ばれるれんがには、乱の合言葉をほうふつとさせる「倉天乃死(蒼天〈そうてん〉すなわち死す)」の文字が刻まれ、当時の混沌(こんとん)とした空気が感じられる。

 動乱の収拾をはかる後漢王朝は有力武将の力を頼みとしたが、かえって武将たちの台頭を許す。華北では曹操が、長江上流域の四川平原では劉備が、下流域では孫堅・孫権親子が立ち、魏・蜀・呉の天下三分の形勢が定まった。

 ■兵器が語る、激しい戦い

 それぞれの境界で争いは特に熾烈(しれつ)を極めた。後漢末から西晋王朝が天下を統一するまでの約100年間、争いの火種が消えることはなかった。

 戦争の時代、兵器も進化した。歩兵の防具として使われた鉤じょう(こうじょう)は、裏に持ち手がついた盾の一種で、片手に持ち相手の攻撃を防ぎながら、もう一方の手に刀を持ち戦った。日本では忍者が使う道具のイメージが強い撒菱(まきびし)は、三国志の時代では、兵馬の行軍を滞らせることを狙い、狭く通行の困難な道や川の浅瀬など交通の要所に敷設された。戦術がより高度になったことの表れであり、曹操軍と劉備軍が激しく取り合った陝西省の定軍山からは多数の撒菱が出土。その一部が展示される。

 ■個性的な三国の俑/曹操の墓を再現

 戦いばかりではない三国の姿をうかがい知ることができる文物も来日する。墓に副葬された人形の俑(よう)は、三者三様だ。蜀の地から出土した舞踏俑は、腰を落とし右手をあげた決めポーズで、表現力の高さをうかがわせる。呉の地から見つかった俑は種類が豊富で、すずりのようなものや扇を持っていたり、琴や笛を演奏していたり。社会の成熟ぶりが分かるという。

 一方、魏の地から見つかった俑は、彩色もなく表情も乏しく質素だ。実はこの俑は、曹操の墓「曹操高陵」から出土した。曹操高陵は2008年に河南省安陽市で発掘が始まり、三国志研究史上最大の発見といわれた。本展最大の目玉はこの墓の出土品で、中国国外での公開は初めて。墓が曹操のものであることの決め手となった「魏武王」と刻まれた石牌(せきはい)や、墓室を構築していた、人物や怪獣が刻まれた石などが展示される。

 会場では、墓の一部を原寸大で再現。通路を抜けた後に広がる墓室を歩き回り、雰囲気を体感することができる。

 ■こだわりの空気とスケール感、味わって 展覧会を企画した東京国立博物館主任研究員・市元塁さん

 曹操の墓が発見されたという一報に触れたのは、2009年の暮れ。相次ぐ戦乱で、墓作りが簡素になり都市も荒廃したことなどから、研究者の間で三国時代は見つかる文物が少ないという認識がありました。曹操の墓は所在を巡って長く論争もあったため、驚きで本当に体が震えたものです。

 特別展準備のため具体的調査を始めたのは17年春。それから10回以上、ほぼ毎月中国に足を運びました。三国志の文物に出合うには全土を訪ねなければなりません。高速鉄道や通信網の発達のおかげで、10年前には倍以上かかっていたであろう時間を短縮することができました。

 今回こだわったのは来場者に「リアル三国志」の空気を感じてもらうこと。曹操は遺言で葬儀の簡素化を命じていたため、墓の発見後、研究者の間では遺言が実行に移されたかに関心が集まりました。ぜひ、会場に原寸で再現された曹操高陵に入り、スケール感を味わい、答えを探してみてください。

 戦いのイメージが強い三国時代ですが、それぞれの地域色が明快になった時代でもありました。自分だったらどこに住みたいか、考えながら展示を見るのも面白い。私なら魏で勉強して、呉で働き、蜀で老後を過ごしたいですね。

 ■人形・漫画とコラボも

 会場では、夢のコラボレーションも実現。横山光輝の漫画「三国志」の名場面の原画や、NHK「人形劇 三国志」で実際に使われた人形9体が展示される。

 ■9日から東京・上野の国立博物館で

 ◇9日[火]~9月16日[月][祝]、東京・上野の東京国立博物館平成館。午前9時30分~午後5時(金、土曜は午後9時まで)。入場は閉館の30分前まで。月曜および7月16日[火]は休館(ただし7月15日、8月12日、9月16日は開館)

 ◇一般1600円(前売り1400円)、大学生1200円(同1000円)、高校生900円(同700円)。中学生以下無料。チケット情報の詳細は公式サイト(https://sangokushi2019.exhibit.jp/別ウインドウで開きます

 ◇問い合わせ ハローダイヤル03・5777・8600

 <主催> 東京国立博物館、中国文物交流中心、NHK、NHKプロモーション、朝日新聞社

 <後援> 外務省、中国国家文物局、中国大使館

 <協賛> 大日本印刷、三井住友海上火災保険、三井物産

 <協力> 飯田市川本喜八郎人形美術館、コーエーテクモゲームス、日本航空、光プロダクション

 ※10月1日[火]~2020年1月5日[日]、九州国立博物館(福岡県太宰府市)に巡回

 ※公式図録(2500円)は通販サービス「朝日新聞SHOP」(https://shop.asahi.com/別ウインドウで開きます)、一般書店でも販売中

 ◆この特集は高橋友佳理が担当しました

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