1969年にデイノニクスと名付けられた恐竜が、恐竜研究の常識を大きく塗り替えた。命名から50年。13日に開幕する「恐竜博2019」(東京・国立科学博物館)は、世界初公開・日本初公開となる数々の重要標本を通して、恐竜学の最前線に迫る。

 ■日本でも海の地層から

 恐竜が繁栄した白亜紀後期、日本の陸と海に暮らした大型生物を、充実した化石標本で紹介するのも見どころだ。

 北海道むかわ町の「むかわ竜」。海だった地層から見つかったため、当初は海生大型爬虫(はちゅう)類の首長竜と誤認された。全身の骨が掘り出されて新種の恐竜の可能性が高いと判明。今回、全身の実物化石と全身復元骨格が展示される。

 和歌山県からは、海に生きた巨大トカゲ、モササウルス類が登場。この標本にしか見られない特徴的な大きなあしひれは、海の中をぐいぐいと力強く泳ぎ回る様を想像させる。「むかわ竜」と同じむかわ町で発見された新種のフォスフォロサウルスも展示。モササウルスの仲間では珍しい夜行性の特徴を持つ。

 恐竜の時代、日本は大陸の沿岸部に位置していたため、各地に海の地層が豊富だ。「むかわ竜」に続く新たな発見が今後も期待される。

 ■定説、覆した化石

 後ろあしに大きなカギツメ――。1969年、米国・イエール大学のオストロム博士によって、デイノニクスと命名された化石だ。米モンタナ州での発掘状況から、集団で大型草食恐竜を襲ったらしいことが分かった。「恐ろしいツメ」を意味する名前通りの指先を武器に、跳び蹴りを繰り返したと推察される。爬虫(はちゅう)類と同じ変温動物と思われていた恐竜が、実は知能とスタミナを備えた恒温動物だったとする「恐竜温血説」がここに誕生した。

 博士はさらに76年、「鳥類の恐竜起源説」を提唱。デイノニクスが鳥類と同じ手首の構造を持つことから、小型肉食恐竜の一部が鳥類に進化したことを示した。現在この説は広く支持されている。絶滅した愚鈍な大型爬虫類ではなく、形を変えて繁栄する恒温動物へ。革新をもたらした化石の、貴重なホロタイプ標本を日本で初公開する。

 ■不思議な特徴、ベール脱ぐ

 1965年、モンゴル・ゴビ砂漠で長さ2・4メートルの前あしの化石が発見された。70年には、その巨大な前あしから、「恐ろしい手」を意味するデイノケイルスと命名され、新種の肉食恐竜だと考えられた。だがそれ以降、前あし以外の部分が見つからず、長い間「謎の恐竜」とされてきた。

 2006年と09年になってほぼ全身の骨が発見される。クチバシを持ち、おなかの中から胃石や魚の骨が出てきたことから、植物と魚の雑食性だったことがわかった。前あしの指先は鋭くとがっている一方、後ろあしの指先は先端が丸い。背中には大きな帆のような構造を持つなど、さまざまな恐竜の特徴を併せ持つ不思議な恐竜であることがわかった。

 今回、デイノケイルスの全身復元骨格と、頭骨などの実物化石を世界で初めて公開。謎の恐竜が、そのベールを脱ぐ。

 ■絶滅の謎に迫る

 約6600万年前、ティラノサウルスなど恐竜たちが繁栄していた地球に、隕石(いんせき)が衝突。地球は、大気圏に巻き上げられた隕石の破片などに覆われ、植物が育たなくなり、草食恐竜やそれを餌とする肉食恐竜が滅んでいった。こうしてほとんどの恐竜は姿を消したが、体の小さいものなどその一部が、鳥類として進化を遂げる。

 隕石に含まれていたイリジウムという元素は本来、地球上にごくわずかしか存在しない。だが、隕石が衝突したときの地層には、通常の最高30倍もの高濃度でイリジウムが含まれていることがわかった。今回、世界各地でこれを目印に特定された当時の地層の薄片などを展示。環境や生態系にどのような変化が起こっていたのか、その謎に迫る。

 ■モンゴルの「ロミオとジュリエット」

 世界有数の化石発掘地であるモンゴルからは、最新の研究成果である、オビラプトル類の貴重な化石も来日する。

 同類のカーンが2体並ぶように発見された化石は、尾の形の違いからオスとメスだった可能性が高く、「ロミオとジュリエット」という愛称で知られる。砂嵐に巻き込まれ、同時に死んで化石になったともいわれている。

 オスとメスの性差は生殖器など軟組織に表れることが多いため、骨や歯など硬い組織しか残っていない化石では判別することが難しいが、近年の研究で徐々に明らかになってきている。

 ■13日から東京・上野で

 ◇13日[土]~10月14日[月][祝]、東京・上野の国立科学博物館。午前9時~午後5時(金、土曜は午後8時まで。8月11日[日][祝]~15日[木]、18日[日]は午後6時まで)。入場は閉館の30分前まで。休館日は7月16日[火]、9月2日[月]、9日[月]、17日[火]、24日[火]、30日[月]

 ◇一般・大学生1600円(前売り1400円)、小・中・高校生600円(同500円)、未就学児無料。チケット情報など詳細は公式サイト(https://dino2019.jp/)

 ◇問い合わせ ハローダイヤル03・5777・8600

 <主催> 国立科学博物館、NHK、NHKプロモーション、朝日新聞社

 <協賛> JR東日本、大日本印刷、トヨタ自動車

 <展示協力> 大日本印刷、DNPアートコミュニケーションズ

 ※本展の図録(2200円)は開幕日以降、通販サービス「朝日新聞SHOP」(https://shop.asahi.com/)でも販売します

 ■金曜・土曜限定ペア得ナイト券

 会場で当日午後5時から2人1組で2千円のペア得ナイト券を販売。2人で同時入場限定です。男女問わず使え、大人同士だと2人で1200円お得です。

 ■鈴木おさむさんが音声ガイド

 多くの人気テレビ番組を手がける放送作家の鈴木おさむさんが、音声ガイドを初めてプロデュースし、自らも出演。恐竜研究の専門家たちとともに楽しく語ります。550円。

 ◆リアルな恐竜たちの迫力ライブ

 世界最大級の恐竜ショー「ウォーキング・ウィズ・ダイナソー ライブエクスペリエンス」を8月1~4日、新横浜の横浜アリーナで開催(朝日新聞社など主催)。BBC放送の同名テレビシリーズを元に制作。最新技術で再現された実物大の恐竜たちが動き、約2億年前にタイムトリップするような感覚です。詳しくは公式サイト(https://www.wwdjp2019.com/)。

 ◇この特集は伊藤綾、佐藤洋子が担当しました

イベントピックアップ

特集