「ヒカルの碁」「DEATH NOTE」「バクマン。」などのヒット作で知られる漫画家・小畑健の画業30周年を記念した初の個展が、13日から東京都千代田区のアーツ千代田3331で開かれる。1万5千枚を超えるアーカイブの中から厳選した約500枚の原画や資料を通して、当代随一と称される画力を堪能できるファン待望の企画だ。

 ■常に進化、「究極の一枚」も

 小畑健は「進化し続ける」漫画家だ。原作者と組んで作画に専念するスタイルで、日々新しい絵を生み出し、数々の傑作を発表してきた。にもかかわらず、「自分に満足したことはほとんどない」と事あるたびに語る。展覧会タイトル「NEVER COMPLETE」(決して完成することのない)には、そんな求道者(ぐどうしゃ)のようなプライドが込められている。

 展示は三つの章で構成される。「ZONE1」では漫画家としての小畑健に光を当てる。その名を一躍世に知らしめた「ヒカルの碁」をはじめ、「DEATH NOTE」「バクマン。」などの名場面や、作画技術が特に際立つシーンの原画を展示する。

 「ZONE2」は「絵師」としての魅力に迫る。美しいカラーイラストを見れば、緻密(ちみつ)な線、繊細な塗りの技術に圧倒されるはずだ。たとえば、「DEATH NOTE」のカラーイラストでは、やわらかな衣服とメタリックな車が、素材まで感じさせるように塗り分けられていることがわかる。

 「ZONE3」で、そんな天才的な画力がとんでもない努力によることを思い知らされる。今回特別に「ゴミ箱」に放り込まれていた大量のラフスケッチを公開。ここまで描かないとだめなのか――。漫画を志す者は驚き、打ちのめされるかもしれない。

 締めくくりには、本展のための完全な新作が待つ。絵師・小畑が、締め切りを気にせず、とことんまで描くとどんな絵が出来るのか。「究極の一枚」をぜひ会場でご覧あれ。

     *

 おばた・たけし 新潟市出身。1989年に「CYBORGじいちゃんG」で連載デビュー。以来、様々な原作者とのタッグで多数の漫画作品を手がける。活躍は漫画の世界にとどまらず、イラストワークとして数々のコラボレーションも発表している。

 ■「漫画がうまいに尽きる」 編集者・吉田幸司さん(寄稿)

 長年編集者として創作を見守ってきた吉田幸司さんに、小畑作品の魅力について寄稿してもらった。

     ◇

 漫画家・小畑健といえばその美麗なイラストを思い浮かべる方が多いと思いますが、私にとってその真髄(しんずい)は“漫画がうまい”ことに尽きます。それは読みやすく読者に漫画の内容を確実に伝える力です。コマ割りによるキャラの動き・時間経過、背景・構図による世界への理解、キャラの表情による心情、セリフの位置による文字の視認など。

 さらに小畑健の画風の特徴は“リアリティー”。リアルではなく、リアリティーです。そのキャラたちは現実の美男美女とは異なり、目鼻口といったパーツは漫画的。そこへ、衣装・小物を正確に足していくことによって、現実にいてもおかしくない雰囲気をまといつつ、しかし漫画のキャラクターであると読者は自然と認識できる。その“合わせる”感覚が抜群なのです。そして漫画内の人物はすべて小畑健自身が描くことによる統一性も加わります。

 「ヒカルの碁」「DEATH NOTE」などの漫画たちは、ほったゆみ・大場つぐみなどの原作の時点で面白いのですが、原稿になると“より面白い”のです。これは担当編集だけの特権でした。

 これからも小畑健の“完成原稿”が楽しみでなりません。

     *

 2001年、集英社に入社。02年「ヒカルの碁」2代目編集者として小畑健担当となる。「週刊ヤングジャンプ」「ジャンプスクエア」でも小畑を担当し、19年現在、「プラチナエンド」担当。

 ■13日から東京・千代田区で開催

 ◇13日[土]~8月12日[月][休]、アーツ千代田3331(東京都千代田区外神田6の11の14)。午前10時~午後5時(金・土曜と14日[日]、8月11日[日][祝]は午後8時まで)。入場は閉場の30分前まで。会期中無休。

 ◇一般・学生1500円、中学・高校生800円、小学生600円、未就学児無料。13日のみ日付け指定制(数量限定)

 ◇展覧会公式サイト https://nevercomplete.jp/

 <主催> 集英社、朝日新聞社

 <企画協力> 週刊少年ジャンプ、ジャンプスクエア

 <協賛> 共同印刷、ローソンエンタテインメント

 ※9月14日~11月10日、新潟市マンガ・アニメ情報館に巡回

 <「DEATH NOTE」「バクマン。」「プラチナエンド」 (C)大場つぐみ・小畑健/集英社>

 <「ヒカルの碁」 (C)ほったゆみ・小畑健/集英社>

イベントピックアップ

特集