漫画を愛し、漫画に愛されて半世紀。常に第一線で新たな表現を追求してきた萩尾望都さんが今年、デビュー50周年を迎えた。代表作「ポーの一族」を中心に、原画や資料など300点以上で創作の軌跡をたどる記念の展覧会が、25日から東京・松屋銀座で始まる。開催にあたり、作品への思いや節目の年に感じることを萩尾さんに聞いた。

 ■漫画に巡りあい、本当に幸せ 萩尾望都さんインタビュー

 「ポーの一族」のきっかけは、ある日「マントを翻した吸血鬼の少年が丘の上に立っている」というイメージがわいてきたこと。そこから少しずつ、お話を考えていったんです。その頃、「コスチュームの歴史」という大きな洋書をいただいたんですね。クラシカルで素敵な衣装がたくさん載っている本を眺めていたら、「バンパネラ(吸血鬼)は年をとらないので、いろいろな時代のコスチュームを描けたら楽しいだろうな」と思って。

 実は私、今でもホラーやオバケ系のものは本当に苦手なんです。ただ石ノ森章太郎先生に「きりとばらとほしと」という吸血鬼を主人公にしたきれいな作品があったので、怖くない吸血鬼のお話なら描けるかもしれない、と。「ポーの一族」に関しては、エドガーとアランのキャラクターがよく立ち上がってくれているので、お話を考えるのは楽なんです。2人を公園や学校に連れて行くと、勝手に動いてくれますから。バンパネラ、異端者として存在している主人公の物語なので、もし2人がどこかの人間の少年だったら、立ち上がる風景も違うものになってくるでしょう。

 「春の夢」で、40年ぶりに新作を描くことになったとき、一番気になったのは絵柄です。絵は生き物で、同じ線、絵は描けないからです。長編連載で絵柄が変わるのは自然なことですし、読者から見れば、その変化もある種の楽しみなんだろうと思います。

 自分の歳(とし)は数えるけれど、デビューしてからの年は数えないので、あらためて「50年です」と言われても「ああ、そうなのか」という感じなんですよ。ただ漫画のお仕事にめぐりあって、今日までずっと続けてこられたのは本当に幸運でした。漫画を描くのはすごく好きなので、これからも何年間かは描けると思うと、幸福ですし、ありがたいことです。(構成・矢内裕子)

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 はぎお・もと 1949年、福岡県生まれ。69年、「ルルとミミ」でデビュー。76年小学館漫画賞、2006年日本SF大賞、16年度朝日賞受賞。12年には少女漫画家として初めて紫綬褒章を受章した。ほかの代表作に「トーマの心臓」「11人いる!」「残酷な神が支配する」など。最新刊「ポーの一族 ユニコーン」(小学館)が10日に発売された。

 ◇インタビューを収録した本展公式記念ブックは、通販サービス「朝日新聞SHOP」(https://shop.asahi.com/別ウインドウで開きます)でも購入できます。特典ポストカード付き。税抜き2700円。

 ■「ポーの一族」とは

 バンパネラ(吸血鬼)の一族に加えられ、少年の姿のまま生きる主人公エドガーが、妹のメリーベルや友人アランとともに永遠の旅を続ける哀(かな)しみを描いた物語。1972年の短編「すきとおった銀の髪」から始まったシリーズで、最初に構想された「ポーの一族」「メリーベルと銀のばら」「小鳥の巣」の長編3部作や「エヴァンズの遺書」「ペニー・レイン」などを経て、76年の「エディス」で終了するまで15作品が発表された。2016年に40年ぶりの新作となる「春の夢」で連載が再開し、反響を呼んでいる。

 ■「トーマの心臓」原画や宝塚歌劇コーナーも

 デビュー50周年を機に、「ポーの一族」シリーズ以外の作品もとりあげる。ドイツの全寮制男子校を舞台に少年たちの葛藤と成長を描いた「トーマの心臓」(1974年)をはじめ、名作の数々を原画で振り返る。

 2018年に上演された宝塚歌劇花組公演「ポーの一族」を紹介するコーナーも。衣装や小道具などを展示し、夢のステージを再現する。

 ■25日から東京・松屋銀座で

 ◇25日[木]~8月6日[火]、東京・松屋銀座8階イベントスクエア(03・3567・1211)

 ◇午前10時~午後8時(7月26日[金]は午後8時30分、28日[日]、8月4日[日]は午後7時30分、最終日は午後5時閉場)。入場は閉場の30分前まで。会期中無休

 ◇一般1千円、高校生700円、中学生500円、小学生300円

 ◇公式サイト https://www.asahi.com/event/poeten/

 主催 朝日新聞社

 総監修 萩尾望都

 特別協力 小学館

 協力 宝塚歌劇団、秋田書店、講談社、集英社、新書館、白泉社

 <作品はいずれも(C)萩尾望都/小学館>

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