18世紀の京都、平明かつ迫真的な写生画で一世を風靡(ふうび)した円山応挙(まるやまおうきょ)と、その画風に南画の情趣を融合させて四条派を確立した呉春(ごしゅん)。多くの人気画家を輩出した円山・四条派の全容に迫る展覧会「円山応挙から近代京都画壇へ」が8月3日、東京・上野の東京芸術大学大学美術館で始まる。江戸中期から昭和初期に活躍した画家の名品の数々に、リアリズムという革命で時代の寵児(ちょうじ)となった巨匠の精神が見て取れる。

 (前期 8月3日[土]~9月1日[日]/後期 9月3日[火]~9月29日[日])

 ■風を読んだアーティスト

 応挙は京都で狩野派の石田幽汀(ゆうてい)に学んだ。一方で、西洋由来の遠近法を強調する眼鏡絵や中国絵画の影響も受け、後に綿密な写生と伝統的な装飾性をあわせた独自の様式を確立。手本や「型」を重んじる狩野派が権勢を誇っていた当時、実物観察を第一とする写実主義は人々に衝撃を与えた。

 「現代で言えば、鉛筆一本で写真のように描かれた絵を見るような驚きだったのかな」と、京都国立近代美術館の平井啓修(よしのぶ)研究員。応挙は解剖学を学び、本物のクジャクや虎の毛皮も見て作品に生かしたとされる。ただ、応挙の写生は単なる「見たまま」ではない。毛の一本一本まで描く「写生図巻(しゃせいずかん)」は、個々のスケッチを元に再構成した。一方、「狗子図(くしず)」は単純な筆遣いでキャラクター化し、むくむくした子犬の「かわいさ」という本質を明快に伝えている。

 応挙の元では息子の応瑞(おうずい)や山口素絢(そけん)、長沢芦雪(ろせつ)ら多くの絵師が育った。応挙が一門を率いて制作した兵庫・香美町の大乗寺所蔵の襖絵(ふすまえ)は、客殿各室の性質を考えて空間全体を構成した傑作だ。与謝蕪村の高弟だった呉春が担当した「群山露頂図(ぐんざんろちょうず)」は蕪村風の様式的な叙情性が色濃いが、8年後の「四季耕作図(しきこうさくず)」には応挙の影響がより感じられる。

 理屈抜きでも楽しめるリアルな写生画は、新興町人が台頭する京都の自由な空気にマッチした。「応挙は今で言うアーティスト気質。時代の風を読む嗅覚(きゅうかく)があり、常に芸術で世の中を驚かせたかったのでは」と平井研究員。応挙に始まる写生の精神はトラの絵を得意とした岸派など多くの画系を生み出しながら、竹内栖鳳(せいほう)、上村松園(しょうえん)らに引き継がれていく。(田中ゑれ奈)

 ■来月3日から、東京芸術大学大学美術館で

 ◇8月3日[土]~9月29日[日]、東京芸術大学大学美術館(東京都台東区上野公園12の8)。午前10時~午後5時。入館は閉館30分前まで。月曜休館(祝休日は開館、翌日休館)

 ◇一般1500円(前売り1300円)、高校・大学生1千円(前売り800円)、中学生以下無料。前売り券は8月2日[金]まで販売

 ◇展覧会公式サイト

 https://okyokindai2019.exhibit.jp/

 ◇問い合わせ ハローダイヤル03・5777・8600

 <主催> 東京芸術大学、朝日新聞社

 <後援> 台東区

 <協賛> 岡村印刷工業

 ※11月2日[土]~12月15日[日]、京都国立近代美術館へ巡回(一部出品作品に変更あり)

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