東京・上野の東京国立博物館で開催中の特別展「三国志」は、曹操の墓と判明した「曹操高陵」からの出土品など、貴重な文物で史実に迫る。日ごろから中国の歴史に関する書物を愛読し、本展の音声ガイドを担当する歌手の吉川晃司さん(53)が会場を訪れた。

 ■人間は、はかない だから今をきっちり生きようと

 会場内には、曹操高陵の内部が原寸大で再現されている。「こういうふうになっていたんですか」。足を踏み入れた吉川さんは思わず声をあげた。

 2014年、テレビの取材で河南省安陽市にある現地に赴いたが、中には入れなかった。少しでも雰囲気を感じるべく、周りを何度も歩いたり、盗掘跡の穴に手や足を入れてみたりしたという。

 吉川さんが中国史に興味を持つようになったのは、個人事務所を立ち上げた30代初めのころ。それまで所属していた事務所が解散、人生の指南を仰ぐ気持ちで歴史書をめくり、「史記」や孫子の兵法書、「三国志」に行き着いた。小説から正史、海外版の翻訳まで20種類ほど読みあさった。「人間を見ることの大事さが分かり、力んでいたのが、フラットになれた。(人が)怖くなくなりました」

 こうも語る。「結局、兵(つわもの)どもが夢の跡で(三国の英雄たちは天下統一を)誰も成就できなかった。人間ははかないものだから今をきっちり生きようと思えるんです」

 吉川さんの声に一段と力がこもったのが、武器の展示室。三国時代の水上戦をイメージし、天井に1千本以上の矢が飛ぶ演出がされている。中央に展示されているのは、三国時代に呉で作られた、矢を発射する武器の「弩(ど)」。木製部分を伴って出土した貴重な一級文物だ。本展を担当する谷豊信・東京国立博物館特任研究員が「研究の結果、弩は、200メートルぐらい飛んだと考えられています」と説明すると、「えっ、こんな小さな弓でそんなに飛ぶの」と驚きを口にした。弓道をたしなむ吉川さん。「筋肉の使い方が現代人と違ったようですからね」と想像を巡らせた。

 「発掘された物から、伝承とか歴史が変わるかもしれない。そういうの、ロマンじゃないですか」。今の世は未来に憂えることが多いと嘆きつつ、「過去の方が楽しい夢が見られる。(来場者には)史実を学びながら、夢の中に入っていって楽しんでもらいたい」と話していた。(高橋友佳理)

 ■来月16日まで、東京・上野で

 ◇9月16日[月][祝]まで、東京・上野の東京国立博物館平成館。午前9時30分~午後5時(金・土曜は午後9時まで)。入館は閉館の30分前まで。月曜休館(ただし8月12日、9月16日は開館)

 ◇一般1600円など。吉川晃司さんによる音声ガイドは550円。詳細は公式サイト(https://sangokushi2019.exhibit.jp/別ウインドウで開きます

 主催 東京国立博物館、中国文物交流中心、NHK、NHKプロモーション、朝日新聞社

 後援 外務省、中国国家文物局、中国大使館

 協賛 大日本印刷、三井住友海上火災保険、三井物産

 協力 飯田市川本喜八郎人形美術館、コーエーテクモゲームス、日本航空、光プロダクション

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