■ヱヴァンゲリヲンと日本刀展+EVANGELION ARTWORK SELECTION

 人気アニメ「エヴァンゲリオン」シリーズをテーマにした展覧会が30日、東京・新宿で幕を開ける。2012年から始まり各地に遠征した「ヱヴァンゲリヲンと日本刀展」が、約6年ぶりに東京に凱旋(がいせん)。さらに原画などを公開しながら各地を巡回した「エヴァンゲリオン展」が、凝縮された形で加わる。二次元と三次元、中近世と現代のアートを融合し、日本のものづくりの底力を披露する。

 ■モチーフの刀と原画、ともに

 会場を彩るのは計26点の刀剣。全国各地の名だたる職人たちが、近未来を描くアニメからヒントをえて、自由な発想で生み出した作品ばかり。伝統的な技を結集しつつ、刃の焼き入れ、彫刻、研磨などを試行錯誤しながら仕上げている。

 中でも圧倒的な存在感を放つのは、長さ約3・3メートルの「ロンギヌスの槍(やり)」。屈指の実力者とされる広島の刀匠・三上貞直さんらが、工房を大きくつくり直すなどの苦労を重ねた。刀身の模様をきれいに出すため、複数の金属を層状に重ねる技法を採用。柄のらせん部分は、電気分解で加工し、生物の血管や神経を思わせるような凹凸模様を表した。

 メカニックデザイナー・山下いくとさんのデザイン画をもとに、数々の受賞を誇る長野の名工・宮入小左衛門行平(みやいりこざえもんゆきひら)さんらが創作したのが「刀野薙(なたやなぎ)」。長い柄の先に反った刃のついた「薙刀(なぎなた)」を原型とするものの、歴史上に存在しない斬新な武器だ。専用台座と刀の柄に使った木材には、すべて漆を塗って金箔(きんぱく)を貼るという贅沢(ぜいたく)品に仕上がった。

 ほかにも、エヴァの形状や色を採り入れた脇指(わきざし)、アニメに登場する女性キャラクターを刀身に彫刻した短刀、銃の要素を組み合わせたソード(剣)などが、クールな美の世界へと誘(いざな)う。

 同じ会場で披露されるエヴァの資料は、「新劇場版」シリーズに出てきた名場面の原画など約200点。来年6月に公開される最終作の原画や設定資料も、特別に公開される。

 ■寄稿 山下いくとさん、氷川竜介さん

 エヴァのメカニックデザイナー、山下いくとさんには「日本刀展」の見どころを、また、アニメ・特撮研究家の氷川竜介さんには、エヴァの原画を鑑賞する意義について、それぞれ寄稿してもらった。

 ◆職人たちの「技術のツリー」 山下いくとさん

 日本刀はこの国古来の伝統工芸。武器に始まり精神性に至るそのイメージは、良くも悪くも堅くて変わらない、気安く触れてはいけない、そんな印象があった。ところが……。「もっといろんなコトに挑戦してみたい!」。そんな現代の刀匠さんたちの声が、過去の日本刀展を見たときに聞こえたようだった。

 たとえば、展覧会のために協力して創った「刀野薙」は、見せることのみに特化したらどうなるかという、思考実験デザインだ。本来は中に隠れるはずの刀身の銘まで見せている。一本の刀は、複数の技術者の総合芸術。刀野薙はそれが分かるように仕上がっていて、いろんな職人さんたちによる「技術のツリー」のように見えれば成功だ。

 本展では、エヴァをテーマにして全開になった職人さんたちの技術力を、ぜひ堪能してほしい。

 ◆美の結晶を積み重ね、動きに 氷川竜介さん

 エヴァシリーズの映像は激しさと美しさを兼ねそなえ、魔法のように不思議な気持ちへと導いてくれる。その表現の中核にあるものは「アニメーションの動き」である。

 特に人間が1枚ずつ勢いのある鉛筆線で描いた「原画」には、奇跡の高みに到達するまでの膨大な「美の結晶」が宿る。アニメーターが魂をこめた繊細なカーブやうねりが「動き」に変わっていくのである。

 ことに今回の展示には、複数の原画を壁面に並べたコーナーが用意され、完成映像の動きを想像しながら一瞬で消えてしまう「手わざ」を一望できる。時間と空間を分解して把握したときの衝撃の体験は、現実世界を刺激的なものに変えてくれるに違いない。

 ■斬新な演出と映像のアニメ 来年新作映画

 エヴァは、近未来の日本を舞台とした物語。10代の少年少女が巨大な人型兵器「エヴァンゲリオン」を操縦し、人類を脅かす敵に挑んでいく。1995年からテレビで放映され、斬新な演出や映像美でアニメ界の話題をさらった。2007年には映画シリーズ「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」が始まり、マンガやゲーム、関連商品などにも広がる。来年6月には、最終作となる「シン・エヴァンゲリオン劇場版」が公開される。

 ■あすから東京・新宿高島屋

 ◇30日[金]~9月9日[月]、東京・新宿高島屋11階特設会場。午前10時~午後8時。ただし、金・土曜は午後8時30分まで。最終日は午後5時まで。いずれも入場は閉場の30分前まで。

 ◇一般千円、大学・高校生800円、中学生以下無料

 ◇問い合わせ 03・5361・1111

 主催 一般社団法人全日本刀匠会事業部、朝日新聞社

 協力 テレビせとうちクリエイト

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