10月14日まで国立科学博物館(東京・上野公園)で開催中の「恐竜博2019」。最新の恐竜研究や展示の裏側を支える人たちの姿を紹介する。

 ■削り出しの出会い、一期一会 化石クリーニング実演・佐藤哲哉さん(33) 

 8月半ばまで会場で、岩石から化石を削り出すクリーニングの実演を担当した。「プレパレーター」(準備する人)と呼ばれ、化石を研究・展示できる状態にする技術者だ。

 化石は、岩石ごと発掘地から運ばれる。それを顕微鏡で細部まで確かめながら、歯医者で使うドリルのような専門工具で削っていく。全長約6メートルの魚竜イクチオサウルスの化石を、約1年かけてクリーニングしたこともある。地道な作業が続くが、「もっと続きが見たくて削っている。海外ドラマを見ているような感覚」と佐藤さんは話す。

 神奈川県出身。4歳ごろに見た恐竜の展示で、その大きさに圧倒され、魅了された。中学時代には、福井の恐竜博物館に初めての一人旅。古生物の研究者になるため、米国の大学に進学した。

 在学中、車で全米15カ所の博物館を巡る旅に出たところ、ある博物館でクリーニングの実演に出会う。「この仕事ならずっと化石に触れていられる」。それがプレパレーターだった。

 大学卒業後は、ロサンゼルスの博物館で、ボランティアから始めて腕を磨いた。2012年から、近年恐竜化石の発掘が盛んな中国・北京大学で、指導も行う。

 これまでに手がけた最古の化石は2億4800万年前のもの。「毎回、化石との出会いは一期一会。何万年、何億年という歳月を経て見つかり、幸運が重なって目の前に来た化石に、きちんと向き合いたい」

     ◇

 化石クリーニング実演は現在別のプレパレーターにより実施中で、10月14日までの金曜・土曜(午前10時半~午後6時半)と日曜・祝日(午前9時~午後5時)。変更の可能性あり。

 ■門外漢、今や復元骨格のプロ レプリカ製作・高橋功さん(70)

 会場内にそびえ立つ全長11メートルのデイノケイルスや、北海道むかわ町で見つかった「むかわ竜」。これらの復元骨格(レプリカ)製作を担当した「ゴビサポートジャパン」(本社・群馬県神流町)の代表を務める。

 レプリカは、化石から型を取って着色し、組み立てる。研究者とも綿密なやり取りを重ねた。「会場で子どもたちが声を上げて喜んでくれる姿を見ると、やっぱりうれしい」と話す。

 元は全くの畑違いだった。神流町(旧中里村)の農家で生まれ、農業高校を卒業後、キノコの菌床栽培をしていた。23歳のとき、道路の建設ラッシュだった村役場に就職。十数年、インフラ整備に携わった。

 転機は1985年。村内で「国内初の恐竜の足跡化石を確認」と発表があった。恐竜で村おこしを、という機運が高まり、中核となる恐竜センター開設と運営に駆り出された。

 展示する化石をモンゴルから借り、技術者に教わりながらレプリカ製作を始めた。モンゴルの恐竜研究者とも行き来が続くうちに信頼関係が深まり、化石の修復などを頼まれるようになった。52歳で役場を退職して独立。自宅の蔵を改築して作業場所にした。

 モンゴルの発掘地に足を運ぶと、白っぽい地層から発掘したての化石はピンクの色みを帯びていた。「化石も元は生きていたと実感した。レプリカは実物とできるだけ同じ色にして、組み立てる時は腰の重心を前に出して、躍動感を出す。とにかく化石をよく見ることが大事」。「むかわ竜」には、地元・むかわ町内に新しく工場を構えて取り組んだ。

 毎年訪れるモンゴルで、盗掘が絶えない現状を嘆く。「化石保護のためにも、モンゴルでの博物館建設に貢献したい」。それが今の夢だ。

 ■来月14日まで、東京・上野で

 ◇10月14日[月][祝]まで、東京・上野の国立科学博物館。午前9時~午後5時(金・土曜は午後8時まで)。入場は閉館の30分前まで。休館日は9月9日[月]、17日[火]、24日[火]、30日[月]

 ◇一般・大学生1600円、小・中・高校生600円、未就学児無料。チケット情報など詳細は公式サイト(https://dino2019.jp/別ウインドウで開きます

 ◇問い合わせ ハローダイヤル03・5777・8600

 <主催> 国立科学博物館、NHK、NHKプロモーション、朝日新聞社

 <協賛> JR東日本、大日本印刷、トヨタ自動車

 <展示協力> 大日本印刷、DNPアートコミュニケーションズ

 ◆この特集は伊藤綾が担当しました

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