ロンドンの大英博物館で「奈良―日本の信仰と美のはじまり」展(奈良県、大英博物館主催、朝日新聞社など特別協力)が10月3日から11月24日まで開かれる。出品される宝物の一部を紹介する。

 ■奈良7寺社の名宝、海を渡って出品

 奈良県は大陸からの仏教文化がいち早く根付き、数々の彫像や絵画など、祈りの美を営々と生みだしてきた地。今年1~3月には、仏パリ・ギメ東洋美術館での展覧会に興福寺の仏像3体を出展。英国での展覧会は県による仏像の海外発信の第2弾となる。

 県内7寺社など所蔵の宝物15件と、大英博物館の日本コレクションから奈良ゆかりの所蔵品8件が合わせて並べられ、シルクロードの終着点である古都の魅力を世界に発信する。

 渡英するのは、飛鳥時代(7世紀)から南北朝時代(14世紀)までの名品で、国宝5件を含む。奈良を代表する古刹(こさつ)、法隆寺(斑鳩町)、薬師寺、東大寺、唐招提寺、西大寺、春日大社(いずれも奈良市)、丹生(にう)川上神社(東吉野村)が名宝を送り出す。

 法隆寺の国宝「観音菩薩(ぼさつ)立像(夢違〈ゆめちがい〉観音)」は、大英博物館所蔵の「法隆寺金堂壁画模写(第9号壁)」などとともに、仏教が日本に根付いた頃の文化の薫りを伝える。彫刻として最古の聖徳太子像とされる法隆寺の重要文化財「聖徳太子坐像(ざぞう)」(平安時代、1069年)に合わせて、大英博物館からは「聖徳太子孝養(きょうよう)像」(鎌倉~南北朝時代、14世紀)が出品される。

 【唐招提寺】国宝 増長天立像 奈良時代(8世紀)

 今回出品される持国天立像とともに二天像として講堂に安置されており、今年、2像とも国宝となった。増長天立像は8世紀中ごろの唐で制作された神将像の造形に通じるという。

 【東大寺】国宝 誕生釈迦仏立像及び灌仏(かんぶつ)盤 奈良時代(8世紀)

 右手を上げて天を指し、左手で地を指す姿は、釈迦が誕生時に言ったとされる「天上天下唯我独尊(てんじょうてんがゆいがどくそん)」に基づく。灌仏盤は誕生仏に注がれる香水の受け皿。

 【法隆寺】国宝 観音菩薩(ぼさつ)立像(夢違〈ゆめちがい〉観音) 飛鳥時代(7~8世紀)

 飛鳥時代後半の白鳳文化を代表する仏像。幼い少年のようにも見える表情が特徴的。悪夢を吉夢に変えるという信仰が別名の由来で、広く親しまれている。

 【春日大社】重要文化財 舞楽面 散手(さんじゅ)(定慶〈じょうけい〉作) 平安時代・寿永3(1184)年

 散手は鉾(ほこ)を持って舞う一人舞の武舞(ぶのまい)。この面は、今回展示される新鳥蘇(しんとりそ)、地久(ちきゅう)の2面とともに、平氏による焼き打ち後の興福寺伽藍の復興事業で制作された。

 【薬師寺】重要文化財 地蔵菩薩(ぼさつ)立像(善円作) 鎌倉時代・延応2(1240)年

 飛雲に乗り、腰をかがめて右足をやや踏み出した姿は、地獄に落ちた人々の救済の場面を表したとみられる。胎内の願文から、鎌倉前期の仏師善円作と分かった。

 【西大寺】国宝 金銅透彫舎利(すかしぼりしゃり)容器 鎌倉時代(13世紀)

 舎利容器は、釈迦の骨とされる舎利を納める器で、信仰の対象とされた。鎌倉時代の彫金工芸の代表作の一つで、龍(りゅう)などの精緻(せいち)な透かし彫りが美しい。

 【大英博物館】聖徳太子孝養(きょうよう)像 鎌倉~南北朝時代(14世紀)

 袈裟(けさ)をまとい、両手で柄香炉(えごうろ)を持って父・用明天皇の病気平癒を祈る少年姿の聖徳太子。付き従う2人は蘇我馬子と小野妹子とみられる。同様の太子信仰を物語る文化財は日本各地の寺に残されている。

 【大英博物館】法隆寺金堂壁画模写(第9号壁) 伝桜井香雲(さくらいこううん)筆 明治時代(19世紀) 原品:飛鳥時代(7~8世紀)

 1949年の火災で焼損した法隆寺金堂壁画の明治時代の模写。1800年代後半、英外交官アーネスト・サトウが画家・桜井香雲に作らせたとされ、焼損前の姿を伝える貴重な作。大英博物館は1881年から所蔵。

 【丹生(にう)川上神社】奈良県指定有形文化財 罔象女神坐像(みずはのめのかみざぞう) 鎌倉時代(13世紀)

 えくぼをつくり、歯を見せてほほえむ。同神社の主祭神で水をつかさどる神。展覧会初出品。日本書紀に伊弉冉尊(いざなみのみこと)の尿から生じたと記される。

 ■大英博物館で来月3日から

 「奈良―日本の信仰と美のはじまり」(英題 Nara : sacred images from early Japan)

 ◇10月3日[木]~11月24日[日]。ロンドン・大英博物館内の展示室「朝日新聞ディスプレイ」(Room3)と「三菱商事日本ギャラリー」(Room93)。入館無料

 <主催> 奈良県、大英博物館

 <特別協力> 法隆寺、薬師寺、東大寺、唐招提寺、西大寺、春日大社、丹生川上神社、文化庁、奈良国立博物館、東京国立博物館、朝日新聞社、三菱商事

 <協力> 日本航空

 ◆朝日新聞社は2005年から、大英博「朝日新聞ディスプレイ」での展示活動を支援

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