ヨーロッパにおいて数世紀にわたり君臨した名門の至宝を集める「ハプスブルク展 600年にわたる帝国コレクションの歴史」が、19日から東京・上野の国立西洋美術館で開かれる。オーストリアと日本の国交樹立150周年を記念。ハプスブルク家が収集した絵画や工芸品、武具などを中心に100点を紹介する注目の展覧会だ。本展を監修した同館主任研究員の中田明日佳さんに、見どころを寄稿してもらった。

 ■絵画・工芸品…時代ごとにドラマ 国立西洋美術館主任研究員・中田明日佳さん寄稿

 広大な領土を支配し、神聖ローマ皇帝の位を一族で独占するなど、中世から近代にかけて権勢を誇ったハプスブルク家。同家の人々は、豊かな富とネットワークを駆使して、質量ともに屈指のコレクションを築いた。そのうちオーストリアを拠点とし続けた同家本流による収集品の大部分は、現在、ウィーン美術史美術館の収蔵品の核となっている。同館協力のもと開催される本展は、ハプスブルク家とそのコレクションの歴史をたどる。

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 最大の目玉となるのは、ベラスケス晩年の傑作「青いドレスの王女マルガリータ・テレサ」だ。スペイン国王フェリペ4世の娘で、有名な「ラス・メニーナス」(プラド美術館)のモデルとしても知られる。

 16~17世紀にかけてオーストリア系とスペイン系に分裂したハプスブルク家では、婚姻などを通して密な関係が保たれていた。マルガリータ・テレサも幼い頃からオーストリアへ嫁ぐことが定められており、その成長ぶりをいいなずけに伝えるべく、肖像画がたびたび制作された。本作品は8歳になる姿を描いたものである。威厳とあどけなさが同居した王女の表情もさることながら、自在な筆致を用いつつ、形や質感を巧みにとらえたドレスやアクセサリーの描写に感嘆を禁じえない。

 そのほか、希代のコレクター・皇帝ルドルフ2世が熱心に追い求めたデューラーの肖像画や、イギリスの清教徒革命に乗じて大公レオポルト・ヴィルヘルムが獲得したティツィアーノやマンフレーディなど、名画の数々も見逃せない。

 見どころは工芸品にも見いだせる。動物の角の杯はかつて、ワシの上半身とライオンの下半身をもつ伝説上の動物グリフィンの鉤(かぎ)爪でできていると考えられていた。杯を支える脚が鳥の爪を模しているのもこのためだ。解毒作用をもつというグリフィンの鉤爪は、杯にふさわしい素材だったに違いない。

 精緻(せいち)な石の組み合わせが見事な貴石細工や、当時の科学の粋を集めた日時計、インド(ポルトガルという説もある)やセイロンからもたらされた金細工の籠や水晶のカトラリーの輝きも目に納めていただきたい。

 さらに本展では、縦横が4メートルを超えるタペストリー2点も紹介される。どちらもラファエロが制作した下絵に基づくもので、第一作が織りあがった際には、誰もがその美しさに深い感銘を受けたと伝えられる。

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 日本では目にする機会の少ない甲冑(かっちゅう)が、4体出品されるのも大きな特徴だ。皇帝マクシミリアン1世とルドルフ2世、大公フェルディナント2世というハプスブルク家の君主たちが所蔵したとされるものだ。フォルムの美しさや、工芸品のような見事な装飾に注目いただきたい。うち1体は、古今の著名人の甲冑を収集していたフェルディナント2世のリクエストに応じて、所有者の孫が贈ったもの。実戦にも使用されたようだが、兜(かぶと)に表されたユーモラスな顔は、この甲冑がカーニバルの仮装槍(やり)試合で着用されるためのものでもあったことを物語る。

 ドラマに満ちた一族の歴史と、コレクターの関心や嗜好(しこう)、それぞれの時代状況に応じて構築されたコレクションの物語にも思いをはせていただければ幸いである。

 ■19日から東京・上野、国立西洋美術館で

 ◇19日[土]~2020年1月26日[日]、東京・上野の国立西洋美術館。午前9時30分~午後5時30分(金曜、土曜は午後8時まで。ただし11月30日[土]は午後5時30分まで)。入館は閉館の30分前まで。月曜、11月5日[火]、12月28日[土]~1月1日[水][祝]、1月14日[火]は休館(ただし11月4日[月][休]、1月13日[月][祝]は開館)

 ◇一般1700円、大学生1100円、高校生700円、中学生以下無料

 ◇展覧会公式サイト https://habsburg2019.jp/

 ◇問い合わせ ハローダイヤル(03・5777・8600)

 主催 国立西洋美術館、ウィーン美術史美術館、TBS、朝日新聞社

 共催 日本経済新聞社

 後援 オーストリア大使館、オーストリア文化フォーラム、BS-TBS

 特別協賛 大和ハウス工業

 協賛 三井物産、大日本印刷、みずほ銀行、ビックカメラ

 特別協力 ぴあ、TBSラジオ

 協力 ANA、ルフトハンザカーゴ AG、西洋美術振興財団

 <いずれもウィーン美術史美術館蔵 Kunsthistorisches Museum Wien>

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