絵画や仏像、刀剣など古美術の名品と、8人の現代作家の作品をペアにして展示する「古典×現代2020」が24日から東京・六本木の国立新美術館で開かれる。現代作品を通じて古典を見たとき、なにが浮かび上がるのだろうか。出展する横尾忠則さん、しりあがり寿さんに創作について、古典の総監修を担当する小林忠さんに見どころについて尋ねた。

 ■横尾忠則×曾我蕭白 知の対極にある霊性、自我が消え去る

 僕はかつて、近代美術は「知の探究」だと思っていたんですが、曾我蕭白(そがしょうはく)の肉体性と自然性を採り入れた狂気に近い表現に知の対立概念としての霊性の存在に気づきました。さらに粗と密、表現主義的なものと装飾的なものがありえない形で溶接されている。

 今回の新作は蕭白が描いた寒山拾得を下敷きにしています。でも、あえて元の絵にはない近代的な要素(文明)を入れて、2人が伴っているほうきを掃除機に、経典をトイレットペーパーに変えています。

 2人は自我を滅却する修業をしている禅僧なので、自我を殺すための装置として首つり輪を用意し、時間を超越した境地として針のない時計も描きました。僕は、自我を消して普遍的なものにすることこそ、創作の目的だと考えています。

 実は、この絵を描いたときは腱鞘(けんしょう)炎で筆がうまく使えず、はけを主に使いました。荒々しいタッチになっていますが、ハンディを抱えた体に任せて描いたら、逆に、煩悩や自我が消滅されていくように思いました。背景に金の絵の具を使っているのは、日本の装飾性を意識してのことです。

 改めて蕭白の絵からは、まだまだ学ぶべきことがあると気づきました。

 (聞き手・編集委員大西若人、写真・山本裕之)

 ■しりあがり寿×葛飾北斎 4畳半から森羅万象、いじって遊ぼう

 新作のテーマは「4畳半からの創世記」。北斎はあんな4畳半みたいな長屋で娘の応為と2人で森羅万象を描いた。住んでいたところと、描いたものの広さのコントラストがすごいなと思ってそれを表現したい。

 浮世絵を描く人はいっぱいいるけれど、画業の長さと幅の広さは北斎が図抜けているような気がします。筆で輪郭をとって描くような日本の線画は、いちばんあそこで完成されたんじゃないかな。

 また、北斎の絵には今の漫画でも見られる技術がありますね。北斎は効果線みたいなものを描いていたり、四コマ漫画みたいなものがあったり、漫画的要素がある。サービス精神は漫画にとっても大切。北斎も芸術だけでなくエンターテインメント寄りの精神だなあという感じがしますね。

 僕も人がやったことがないようなことをやりたくて、それも「ばかだねえ」「くだらないねえ」というのがいいよね。

 感じてほしいのは、北斎と遊んだら楽しいよってこと。北斎は巨大だから「これが北斎です」と1人の人間が言えたり対峙(たいじ)できたりするものでもない。「みんなしていじりましょうよ」というきっかけみたいな感じですね。

 (聞き手・千葉恵理子、写真・杉本康弘)

 ■出会いの妙、楽しむ 小林忠さん(美術雑誌「國華」主幹)

 北斎や蕭白、若冲など、「古典」として会場に並ぶ作品も、当時は時代の先をいく「前衛」でした。そう考えると、過去の天才たちの仕事が、現代の最先端をいく作家の作品と通い合って不思議はありません。

 古典と現代が、同じ部屋でどのように呼応し、反響するのか。それをどう受け止めるかという意味で、見る人も参加する展覧会と言えるでしょう。反発を感じる人もいるかもしれませんが、それも鑑賞の仕方の一つです。

 現代美術の愛好者と古美術の愛好者は比較的分かれているように思いますが、そういった方々が一つの美術館で出会うことも面白いんじゃないでしょうか。

 古典と現代の出会いを、一例一例、楽しんでいただけたらと思っています。(聞き手・松本紗知)

 ■24日から、東京・国立新美術館で

 ◇24日[水]~8月24日[月]、東京・六本木の国立新美術館企画展示室2E。午前10時~午後6時。入場は閉館の30分前まで。火曜休館

 ◇展覧会ホームページ

 https://kotengendai.exhibit.jp

 ◇問い合わせ

 ハローダイヤル03・5777・8600

 主催 国立新美術館、國華社、朝日新聞社、文化庁、日本芸術文化振興会

 協賛 大日本印刷、UACJ

 ■事前予約制、混雑緩和にご協力ください

 混雑緩和のため、オンラインでの事前予約制(日時指定券)を導入します。事前に公式オンラインチケットの販売ページ(https://www.e-tix.jp/kotengendai_daytime/)から、「日時指定観覧券」(一般1700円、大学生1100円、高校生700円)を購入してください。

 旧会期が記載された購入済みチケットや無料観覧券(有効期限記載のものも含む)をお持ちの方や中学生以下(入場無料)も、上記ページから「日時指定券(無料)」の取得が必要です。

 ◆新型コロナウイルス感染拡大防止のため、当初予定していた会期(3月11日~6月1日)が変更になりました。今後も会期などに変更の可能性があります。また、美術館入り口の検温で37.5度以上の発熱が確認された場合は入館できません。入館時のマスクの着用など、ご理解とご協力をお願いします。

 ◆会期変更に伴い、希望者にはチケットの払い戻しをします。

 ※いずれも詳細は展覧会ホームページ、またはハローダイヤル

 <展示期間は変更になる場合があります>

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