日本の古美術の人気が高い。今では美術館で見るこうした作品の数々は、昔はどう楽しまれていたのか。サントリー美術館のリニューアルオープンを記念する展覧会の第2弾「日本美術の裏の裏」は、かつての味わい方を、同館所蔵の絵画や工芸の名品を通し、追体験してもらおうという企画だ。鑑賞の裏技を知ったり、作品の裏に回ったり。展覧会場には意外な体験が待っている。

 ■壺の表情・作中の旅人…いつもと違う目線で

 新緑のなか、滝つぼへ落ちてゆく水。轟音(ごうおん)まで聞こえてきそうだ。会場に入ってすぐに出あうのが、円山応挙の「青楓瀑布(せいふうばくふ)図」だ。

 最大の見どころは、縦約180センチという大きさ。応挙の他の滝の大作には、庭の松に掛けて実物さながらに楽しむために描かれた、との言い伝えがあるという。今展でも「実物」と見まがうような展示の工夫が施される。

 現代の鑑賞法では、描き方や色といった表現を味わい、作者の経歴を知る、という形が正統派だろう。しかし久保佐知恵・学芸員は「自分が所有者だったらどう飾りたいかを想像し、空間を味わっていただきたい」と話す。だから第1章は「空間をつくる」だ。

 第2章「小をめでる」には、その名の通り、超絶技巧で作られたミニチュアサイズの雛(ひな)道具などが並び、素直な「目の驚き」が訪れることになる。

 いわゆる「ヘタウマ」系の絵がそろうのが第3章「心でえがく」だ。中でも説経節に絵を加えた「かるかや」。最後のクライマックスの場面も、素朴な筆で阿弥陀如来や菩薩(ぼさつ)がほのぼのと描かれているように見える。色彩も、ほんわり明るい。が、これは来迎(らいごう)図で、亡くなった父子にお迎えが来たところだ。

 上野友愛・主任学芸員は「面白いね、で済ませてほしくはありません。見ていただければ、すごく気持ちを入れて描いていることが分かるはずです」と説く。

 第4章は、やきものに表れる「表情=景色」を味わう「景色をさがす」で、まさに作品の裏に回って楽しめる。表情の変化が激しいのが、信楽焼の「壺(つぼ) 銘 野分(のわき)」だ。

 ある角度から見ると焦げ跡が残ってごつごつしているが、裏側は美しい発色でツルンとなめらか。柴橋大典・学芸員は「中国のやきものでは左右対称や均質さが尊ばれますが、日本の価値観は少し異なり、例えば信楽焼では、自然が生み出した、焼いてみないと分からない表情を楽しみます」と話す。

 桜と楓(かえで)。日本美術の定番のモチーフだが、古今和歌集などに登場する和歌が元になっていたことが多い。和歌と美術の関係を紹介するのが第5章「和歌でわかる」で、大ぶりな鉢に桜と楓を描いた仁阿弥道八「色絵桜楓(おうふう)文透鉢(すかしばち)」などが紹介される。

 そして最終・第6章は「風景にはいる」だ。池大雅や歌川広重の作品に登場する「点」のような小さな人物に自分を託して見てみれば、風景の雄大さや潜む物語が体感できる。そんな鑑賞法の提案だ。

 上野・主任学芸員は「いつもと違う知識を得たり、能動的に見たり、といった体験を通し、自分はどこが好きだ、どこに飾ろう、と思ってもらえれば、とてもうれしい」と話している。(編集委員・大西若人)

 ◇30日[水]~11月29日[日]、東京・六本木のサントリー美術館(03・3479・8600)。午前10時~午後6時(金、土曜と11月2、22日は午後8時まで)。入館は閉館の30分前まで。11月3日、24日を除く火曜休館。会期中展示替えがあります

 ◇一般1500円、大学・高校生1千円、中学生以下無料

 <主催> サントリー美術館、朝日新聞社

 ※すべてサントリー美術館蔵

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