古代エジプトの信仰と死生観が分かる――ヨーロッパ有数の博物館の名品、約130点を展示する「国立ベルリン・エジプト博物館所蔵 古代エジプト展 天地創造の神話」が開催中だ。東京展(江戸東京博物館)のオフィシャルサポーターを務める人気講談師・六代目神田伯山さん(37)と、展示室を巡った。

 ■大きな女神、圧倒的/呪文びっしり、「芳一」みたい

 「大きさに圧倒されますね」。星々がきらめく演出の展示室で、2体のセクメト女神座像を見あげた伯山さんは声をあげた。女神は頭部がライオンで、もとは殺戮(さつりく)と破壊の神とされていたが、圧倒的な力から、病気を治し、人びとを救済する神としてあがめられるようになった。

 この2体は、トゥトアンクアメン(ツタンカーメン)の祖父に当たる王ファラオが、テーベ(現ルクソール)の神殿に納めたとされる約600体のセクメト像の一部。王が晩年に患った病の治癒を祈ったと言われる。「こんなに大きなものを600体も造ったなんて。人類の財産です」と伯山さん。「疫病をつかさどる神でもあったので、新型コロナウイルス退散をセクメトに祈願したいですね」

 次の展示室に進むと、付けひげをして男性の姿をしたハトシェプスト女王の胸像が。もとはスフィンクス像で、体の部分が破壊され、胸像のみが残る。義理の息子で次のファラオとなったトトメス3世が、女性の王の痕跡を消そうとしたと言われている。「当時の人間模様が分かります」と、伯山さんはしみじみと語る。

 ひときわ長く見入っていたのが、「死後の審判」の空間だ。古代エジプト人たちは、この世を仮のものと考え、死んだあとは永遠の生命を得られると考えていた。そのために、遺体をミイラとして保存し、心臓の上にはスカラベ(タマオシコガネ)の形をした護符を置き、冥界の指南書である「死者の書」を副葬した。

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 小学校3年のとき、伯山さんは父親を突然亡くした。その頃から人間は死ぬのだと強く認識し、死について人一倍考えてきたという。「死者の書」から抜粋した呪文がびっしりと装飾された「タイレトカプという名の女性の人型棺」に見入ると、「足の裏にも文字が書いてあって『耳なし芳一』みたい。死がよっぽど怖かったんでしょうね」。「昔は今より寿命も短く獣も多くて死と隣り合わせだったから、死後の物語を作ることで精神を安定させたのだと思う。彼らが必死につないできた命なんだと分かると、何かほっとします」

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 講談によって江戸時代にタイムスリップするように、本展で一瞬でも今の厳しい現実を忘れてもらえれば、とも願う。「講談を聞いて『やっぱり面白い』と元気になっていただけるように、エジプト展を見て『人間って何も変わらないな』と感じて、活力にして欲しいですね」

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 伯山さんは会場を見た後、江戸東京博物館で独演会を開いた。元禄時代が舞台の「幽霊退治」を古代エジプト展になぞらえて特別にアレンジした「ミイラ退治」などを披露。来場した約360人から、貴重な熱演に惜しみない拍手が送られた。(高橋友佳理)

 ■今にも動き出しそう

 展示室には、ヒヒやワニ、マングースなど様々な動物の姿の神の像がある。特に目をひくのが猫の「バステト女神座像」。猫をペットにしたのは古代エジプト人が最初だったと言われているだけあり、いまにも動き出しそうだ。伯山さんも「すごく精巧に出来ている」と感心しきりだった。

 ■4月4日まで、東京・両国の江戸東京博物館で

 ◆4月4日[日]まで、東京・両国の江戸東京博物館。午前9時30分~午後5時30分(入館は閉館の30分前まで)

 ◆月曜休館

 ◆一般1800円、大学・専門学校生・65歳以上1440円、小中高生900円、未就学児無料

 ◆公式ホームページ https://egypt-ten2021.jp

 ◆問い合わせ 同館(03・3626・9974)

 主催 公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都江戸東京博物館、ベルリン国立博物館群エジプト博物館、朝日新聞社、日本テレビ放送網、東映

 後援 ドイツ連邦共和国大使館

 協力 ルフトハンザ カーゴ AG

 協賛 野崎印刷紙業

 ※京都市京セラ美術館(4月17日[土]~6月27日[日])、静岡市の静岡県立美術館(7月10日[土]~9月5日[日])、東京・八王子市の東京富士美術館(9月19日[日]~12月5日[日])へ巡回

 ◆会期などに変更の可能性があります。

 ◆入館には検温、マスクの着用が必要です。

 ◆来場者同士の間隔があけられるよう、入場者数を制限する場合があります。

 ※いずれも公式ホームページでご確認ください

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