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2021年7月7日05時00分
緑、きれい、癒やし、静か――。植物というと、どんなイメージを思い浮かべますか。10日に東京・上野の国立科学博物館で開幕する特別展「植物 地球を支える仲間たち」では巨大だったり、アクティブだったり、くさかったりとちょっと驚く植物ワールドを紹介します。さあ、神秘の森に分け入ってみましょう。
■高さ2・72メートルの巨大な花、においも再現
展示の目玉の一つは、大きすぎる「花」だ。
インドネシア・スマトラ島原産の「ショクダイオオコンニャク」は世界最大級の花の集まり(花序)をつけるとして知られ、高さ2・72メートルの実寸大模型が展示される。ギネス世界記録では高さ3・1メートルだ。「花」は中央の煙突のような肉穂(にくすい)花序と、それを囲む仏炎苞(ぶつえんほう)からなる。まるでロウソクの燭台(しょくだい)のようだ。肉穂花序の最下部には雌花、その上には雄花がぎっしり。悪臭を放ち、「世界で最も醜い花」とも言われる。
茨城県つくば市の国立科学博物館筑波実験植物園では2012年から同じ株で5回開花させた。模型は14年の開花時のものだ。花序は1カ月ほどでぐんぐん成長し、咲いて3日ほどで倒れる。栽培担当の小林弘美さんは「開花すると、肉穂花序が38度ぐらいまで発熱し、上部からもうもうと湯気が出てきて生ごみのような悪臭が強烈になります。でも、ココナツのような甘いにおいもほんのりと混じっているんです」。
受粉を担うのは、腐った肉を食べる甲虫のシデムシの仲間。虫をおびき寄せるため、花が腐った肉に擬態したと考えられている。同館植物研究部の堤千絵研究主幹は「巨大化したメカニズムはよく分かっていませんが、短期間で生育し、煙突のような形で遠くまでにおいをまき散らすエネルギーはすさまじいと思う」。採取したにおいの成分をもとに、においを再現する。会場でかいでみよう。
世界最大の花「ラフレシア」は花の直径111センチの記録を持つ。展示では、スマトラ島に分布するラフレシア・アーノルディという種の直径80センチの実寸大模型(京都府立植物園蔵)が登場する。
■「青いキク」秘話
最先端の研究にも触れられる。遺伝子組み換え技術を用いて生まれた「青いキク」だ。17年に農研機構(つくば市)とサントリーグローバルイノベーションセンター(東京都港区)が共同で開発した。
農研機構では01年から研究を開始。赤やピンクのキクに、パンジーやトルコギキョウなど、十数種類の青色の花の遺伝子を導入して研究。青紫色のカンパニュラの遺伝子を導入すると花色は紫色に。さらに、青いチョウマメの遺伝子を働かせると鮮やかな青色が発色した。「花色がピンクのままだったり、薄紫だったりと失敗の連続。青になった時は感動しました。栽培したキクは3千本以上でしょうか」と野田尚信上級研究員。
■食虫植物も展示
植物展は、生き方や進化、光合成など7章で構成。ハエトリソウなどの食虫植物や、オオミヤシの巨大な種子などの実物展示も含め、標本や模型、映像、インスタレーションで200種以上の植物を総合的に紹介。
アクティブな面にも焦点を当てた。ハネフクベは、全長15センチほどの、ハンググライダーのような両翼のついた種子を飛ばす。監修の国立科学博物館植物研究部、国府方(こくぶがた)吾郎研究主幹は「過酷な環境でも育つ植物のダイナミックな生き方を知り、すごい、面白いと感じてほしい。生物多様性やSDGs(持続可能な開発目標)を考えるきっかけになれば」と話す。(山根由起子)
■♪歌って学ぶ花の遺伝子
「AとかBとかC 花の遺伝子に機能があるある……」。一重と八重のツバキなど、花の形を決める遺伝子の働きについて、「花の遺伝子ABC」の歌でリズムに乗せて楽しく覚えられます♪
https://plants.exhibit.jp/enjoy/
■10日から東京・国立科学博物館で
◆10日[土]~9月20日[月][祝]、東京・上野の国立科学博物館。午前9時~午後5時。入場は閉館の30分前まで。7月12日[月]と9月6日[月]は休館
◆一般・大学生1900円、小・中・高校生600円。未就学児は無料
◆公式サイト(https://plants.exhibit.jp/)
◆問い合わせ ハローダイヤル050・5541・8600
主催 国立科学博物館、NHK、NHKプロモーション、朝日新聞社
協賛 DNP大日本印刷、ハウス食品グループ
協力 基礎生物学研究所、日本育種学会、日本光合成学会、日本植物園協会、日本植物学会、日本植物生理学会、日本植物バイオテクノロジー学会、日本植物分類学会
※2022年1月14日[金]~4月3日[日]、大阪市立自然史博物館へ巡回予定
◆オンラインによる事前予約(日時指定)が必要です。未就学児や無料入場対象者も、公式サイトで日時指定予約をしてから来場ください
◆マスクの着用が必要です。検温で発熱などの症状がある場合は入館できません。ご理解とご協力をお願いします
◆会期や開館時間などに変更の可能性があります
◆事前予約の方法など、詳細は公式サイト
※本展の公式ガイドブック(2200円)は開幕日以降、通販サービス「朝日新聞SHOP」(https://shop.asahi.com/)でも購入できます
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