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2021年10月16日05時00分
アニメ「エヴァンゲリオン」シリーズや、特撮作品「シン・ゴジラ」などの制作で知られる庵野秀明の初の大規模個展が、12月19日まで東京・六本木の国立新美術館で開かれている。2千平方メートルという国内最大級の展示室に、所狭しと並ぶ1500点超の作品・資料。圧倒的な物量で照らし出すのは、希代の映像作家の歩みだ。
「ウルトラマン」「仮面ライダー」「宇宙戦艦ヤマト」――。冒頭、秘密基地さながらの空間に並ぶのは、少年時代の庵野が影響を受けた、1960年代~70年代のアニメや特撮作品で使われた原画や立体造形物の数々。庵野の感性を育んだこれらの作品は、自らの創作にあたって自在に参照できる資料庫として、その脳裏に刻まれている。
同じパートには、機械のメカニズムに関心を抱くきっかけになったという生家のミシンなども。時代を切り開いた先行作品への敬愛や望郷を強くにじませる、温故知新の作家の姿を浮き彫りにする。
その後展示は一転し、庵野の生み出した作品が時系列で駆け抜ける。
アニメ界の注目を集めた、日本SF大会「DAICON(ダイコン) 3」のオープニングアニメーションや、「ウルトラマン」へのオマージュとして制作した実写特撮作品の映像は、アマチュア離れしたセンスを証明する。
メカや爆発、煙の緻密(ちみつ)な描写でアニメーターとしての名を上げたのが、「風の谷のナウシカ」と「王立宇宙軍 オネアミスの翼」。宮崎駿監督に巨神兵のシーンを任された「ナウシカ」、氷片を散らしてロケットが飛び立つシーンが語りぐさになる「王立宇宙軍」の作画資料は見どころの一つだ。
庵野はその後、88年のアニメ「トップをねらえ!」で商業作品の監督として一歩を踏み出し、「ふしぎの海のナディア」や、90年代に社会現象を巻き起こした「新世紀エヴァンゲリオン」を送り出す。庵野による詳細な設定画やデザイン画などを、ポスターや映像も交え最大級の手厚さで展示する。
アニメから実写や特撮への挑戦も始めた90年代後半以降の展示では、村上龍の小説を小型ビデオカメラで映像化した「ラブ&ポップ」や、実写とアニメの表現を融合させた「キューティーハニー」などを紹介。それぞれのジャンルから最適な表現を柔軟に採り入れる、庵野ならではの制作手法が実感できるはずだ。
その文脈で、3DCGなど新しいデジタル技術を導入して挑んだ「エヴァンゲリオン」の新劇場版シリーズ、とりわけ今年公開された「シン・エヴァンゲリオン劇場版」の画面構成の検討で使われた実物のミニチュアが存在感を放つ。
最終盤では、展示冒頭の少年時代に夢中になった作品の数々と、還暦を越えたいま携わっている仕事が、強く共振する。制作中の映画「シン・ウルトラマン」や「シン・仮面ライダー」の小道具や台本や、次世代への継承のために関わるアニメ・特撮資料の保存活動……。
過去と未来を結ぶ円環の中に身を置きながら、観客が見たいと思う映像のために、魂を削る作家の姿が現れる。(木村尚貴)
<HIDEAKI ANNO>
1960年、山口県宇部市生まれ。
大阪芸術大学に在学中の81年、大阪で開催された日本SF大会で「DAICON 3 オープニングアニメーション」を発表する。その後、アマチュア映画集団「DAICON FILM」で数々の作品を手がける傍ら、アルバイトでテレビアニメ「超時空要塞(ようさい)マクロス」(82年)に原画担当として参加。以後、アニメーターとして数々の作品でエフェクトやメカ作画を手がける。
90年にNHKのアニメ「ふしぎの海のナディア」で初のテレビシリーズ監督を、95年にはテレビアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」の監督を務めた。
2006年、株式会社カラーを設立。同年から「エヴァンゲリオン」の新劇場版シリーズ4部作を自社製作し、原作、脚本、総監督、エグゼクティブ・プロデューサーを担当した。実写映画「シン・ゴジラ」(16年)の総監督を挟んで、21年春に「新劇場版」シリーズ完結編となる「シン・エヴァンゲリオン劇場版」を公開。興行収入100億円超を記録した。
◆国立新美術館(東京・六本木) ~12月19日(日)
◆休館日 毎週火曜日 ※ただし11月23日(火・祝)は開館
◆開館時間 10:00-18:00 ※毎週金・土曜日は20:00まで
■会期中、一部作品の展示替えあり
■一般2100円、大学生1400円、高校生1千円、中学生以下無料
■展覧会ホームページ
https://www.annohideakiten.jp/
■問い合わせ
ハローダイヤル(050・5541・8600)
■原則オンラインでの事前予約制です(当日会場販売は予定枚数に達し次第終了)
■会期や開館時間などに変更の可能性があります
■入館時のマスク着用と検温にご協力ください
主催 国立新美術館、朝日新聞社、日本テレビ放送網、日テレイベンツ、文化庁、日本芸術文化振興会
協賛 DNP大日本印刷
企画協力 カラー、グラウンドワークス:、アニメ特撮アーカイブ機構
※詳細は展覧会ホームページ
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